五代目乙姫に崎濱さん 紀三井寺龍灯献上行脚

龍宮から乙姫が龍灯を携えて訪れたという紀三井寺(和歌山市)の伝説を再現する「龍宮乙姫龍灯献上行脚」が8月9日午後8時から行われる。オーディションで五代目乙姫役に選ばれた会社員の崎濱菜花さん(25)=同市=と、乙姫と共に行脚する女官役4人のお披露目が9日、紀三井寺で行われ、5人は本堂で大役の成功を祈り、本番に向けて決意を新たにした。

紀三井寺では毎年8月9日、一日の参詣で千日分の功徳が得られるという「千日詣」が行われており、乙姫の伝説が由来となっている。1254年前の奈良時代、唐から日本に渡り、紀三井寺を開いた為光上人が大般若経を写経した際、乙姫が現れて観音霊場の建立を喜び、毎年の同日に、海の中でも消えない龍灯を献上しに、龍宮から訪れると話したと伝えられている。

「龍宮乙姫龍灯献上行脚」は、この伝説をより広く知ってもらい、地域活性化を図ろうと、2017年に初めて実施。18年には実行委員会を立ち上げ、乙姫役を決めるオーディションが始まり、コロナ禍による20~22年の中止を経て、今回が5回目の実施となった。

今回のオーディションは5月26日に和歌山市の和歌山城ホールで開かれた。女官役には、会社員の福田麻理奈さん(25)=同市=、和歌山大学2年生の田端望愛さん(20)=同市=、俳優の小林怜衣さん(22)=神戸市=、桃山学院教育大学4年生の奥田茉莉さん(21)=大阪府和泉市=の4人が選ばれ、乙姫一行を迎える巫女役の3人も決まった。

乙姫役の崎濱さんは子どもたちが大好きで、保育士の資格を持ち、和太鼓のチームで小学生から高校生と関わっているとのこと。「これまでの乙姫は厳かで、凛とした印象ですが、私が乙姫を務めることで、見てくれた子どもたちが身近な存在として感じてもらえたらうれしい。当日は子どもたちと目を合わせて、笑顔を見せられるように練習に励んでいきます」と意気込む。

女官役の福田さんは「イベントごと大好きなお祭り人間なので、ラストチャンスと思って受けました。乙姫さまを全力で盛り上げていきます」、田端さんは「オーディションの募集を見た瞬間、かっこいい、私もなりたいと思いました。みんなと顔を合わせて、ワクワクしかありません」、小林さんは「お寺がすごく好きで、紀三井寺さんとこんなすてきなご縁を頂けるなんて思っていなかったので、幸せがいっぱいです」、奥田さんは「西国三十三所巡礼で紀三井寺に来て、ポスターを見て絶対受けようと思いました。すごく楽しみで、練習頑張ります」と、それぞれ笑顔を輝かせて話していた。

紀三井寺の前田泰道貫主は、5人と共に本堂で観世音菩薩に祈り、為光上人と乙姫の出会い、龍灯を献上する乙姫の姿などが描かれた絵図「紀三井寺参詣曼荼羅」について、5人に解説した。

初代乙姫を務め、行脚の演出を手掛ける和歌山オリエンタルダンス協会代表理事のエヴァ香陽さんは「大役を演じる中で、自分の中に眠っている、まだ自分も知らない自分に出会ってほしい」と期待を寄せた。

 

乙姫、女官役に決まった(左から)田端さん、小林さん、崎濱さん、福田さん、奥田さん

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