「百湯一首」で誘客を 12湯サミットで越前屋俵太さんら

パネルディスカッションで語る越前屋俵太さん㊧ら
パネルディスカッションで語る越前屋俵太さん㊧ら

和歌山県内温泉の魅力発信を目的に、旅行業者や宿泊事業者らでつくる「わかやま12湯推進協議会」(青木査稚子会長)は9月29日、和歌山市毛見の和歌山マリーナシティホテルで「第6回わかやま12湯サミットin和歌山市」を開いた。和歌と温泉をテーマに、講演やパネルディスカッションを通して、温泉と地域の歴史・文化を組み合わせた新たな観光振興の在り方などについて議論を深めた。

同協議会は2020年に発足。508カ所もの源泉を有する和歌山の温泉の魅力を全国に知ってもらうため、県内の温泉施設30カ所で「御湯印」を集める「巡湯帳」などの企画に取り組んでいる。

同サミットは21年から毎年、県内の温泉地を巡回し、和歌山市で初開催となった今回は、関係事業者や行政などから約70人が参加した。

講演したのは、タレントで書家「俵越山」としても活動する越前屋俵太さん。和歌山市温泉協議会の動画配信の総合演出を手がけ、「ワンダフロー」キャンペーンを企画するなど、ユニークな発信に取り組んでいる。

講演では、現在も続く長寿テレビ番組「探偵! ナイトスクープ」の初代探偵などとして人気を博していたが、過剰な演出など業界の体質を嫌い、一時テレビから姿を消したこと、書家の榊莫山から「白い紙の上には何の制約もない。書は己を解放する道具だ」と教わり、自分が書きたいように書く自由な書に取り組んできた経験などを通して、「うまく生きようとするんじゃなくて、生きたいように生きればいい」と自然体であることの大切さを語った。

古来のリゾート地 湯上がりの一首を

パネルディスカッションでは、㈱トラベルニュース社の奥坊一広社長をコーディネーターに、越前屋さん、紀三井寺貫主の前田泰道さん、湯治のできる宿しらさぎ女将の熊野幸代さん、㈱白浜館統括支配人の川田純子さんの4人が、温泉の魅力を発信する新たなアイデアなどを語り合った。

前田さんは、天皇や上皇から庶民に至るまで多くの人々が熊野詣に訪れた和歌山は、現代でいえば優れたリゾート地だったとの視点から、「海も山も温泉も和歌もあり、傷ついた人の心を優しく包み、己を取り戻すきっかけになったのが熊野であり、和歌山の温泉地だったのではないか」と話した。

越前屋さんは、来訪者に温泉を楽しんだ気持ちを和歌や俳句に詠んで応募してもらい、作品を「湯めぐりカレンダー」にすることや、小倉百人一首のように、県内の温泉にちなむ和歌100首でつくる「百湯一首」のアイデアを提案。「温泉に入って気分いいなっていう時に、湯上がりの一句みたいに、みんなが書いてくれたらええなと思う」と、型にはまらず、のんびりした気分で詠んでもらうことが大切ではないかと強調した。

熊野さんは、歴史や文化を難しく伝えるだけでは観光客の行動に結び付きにくいとして、楽しさや面白さを入り口にする必要性を指摘。和歌についても、詠む際の「キーワード」になる、地域にゆかりの言葉を宿が示しておくことで、「お客さまがお風呂に入りながら、宿のことや温泉のこと、地域の人のことなどを思う時間になる。和歌が“つなぎ”になるんじゃないか」と期待を寄せた。

川田さんも和歌を生かすアイデアに賛同し、宿泊施設だけでなく、関係事業者や行政などを含めた「チーム和歌山」で取り組むことが大事だとし、「『和歌山で面白いことやってるで』という感じで皆さまにお越しいただきたい。ホテルのスタッフも楽しんで、みんなで盛り上げていく企画にしたい」と、早期のスタートを呼びかけた。

青木会長は「温泉は体を温め、疲れを癒やすだけのものではない。その土地の歴史、文化があり、人と人との出会いがある」とし、温泉文化をユネスコ無形文化遺産に登録を目指す活動が進められている中、「機運をさらに高めていきたい」と話していた。