伊勢路旅⑦三重県熊野市(3)
前号に続き、熊野市について取り上げる。今週は舞台を伊勢路が続く沿岸部に移し、世界遺産に登録されている花の窟(いわや)神社を紹介したい。
花の窟神社は熊野市の北東部の沿岸に位置する。奈良時代に記された『日本書紀』で、「国うみの舞台」として記録に残る日本最古の神社。祭神は、神々の母・イザナミノミコトと、火の神・カグツチノミコト。カグツチノミコトを産んだ際に亡くなったイザナミノミコトが葬られた御陵で、御神体は高さ45㍍の巨大な岩(窟)とされている。
また、古くから近隣の人々がイザナミノミコトを弔い、季節の花々を供えて祭られてきた自然崇拝の地といわれ、神社の名である「花の窟」の由来とされている。
例大祭は2月2日(春季)と10月2日(秋季)に行われる。神々に舞を奉納し、約170㍍の大縄を御神体である岩(窟)の上部から境内にある松の御神木に渡す神事。「花の窟のお綱かけ神事」として三重県の無形民俗文化財にも指定されている。季節の花(春にはツバキ、秋にはケイトウ)を大縄に結ぶ習わしが特徴。
筆者が訪れると女性の参拝客が多い印象。御神体である巨大な岩(窟)が、神社のほど近くにある熊野灘の波の音を深く轟かせるさまは、ここでしか味わえない、神聖で心を落ち着かせるものがある。
神社の脇を走る国道42号を渡れば、七里御浜が広がる。そこからは御神体の全体を拝むことができるので、ぜひ浜辺も散策してほしい。
アクセスは、JR熊野市駅から新宮駅行きのバスで約2分。「花の窟」で下車。国道42号に面し、駐車場もある。この地ならではの自然崇拝の文化にふれてみては。
(次田尚弘/熊野市)