漆器のまちのシンボル 精製師の三木さん寄贈
海南市船尾の三木倉漆店3代目、漆精製師の三木寛昭さん (69) が、同市黒江の紀州漆器伝統産業館 (うるわし館) や民家など地元6団体に、 祖父の代から使ってきた仕事道具のおけ 「合わせ鉢」 「くろめ鉢」などを寄贈した。 おけは花が飾られるなど現代風にアレンジされた。 今後は 「漆器のまち」 のシンボルとして大事にされるという。
寛昭さんは、 父の律夫さんから家業を継ぎ、 約50年間、 漆の精製に携わってきた。 ウルシの木から採取した原液から不純物を取り除く仕事で、 いわば 「漆器作りの裏方」 だ。
三木さんは 「この仕事は危険、 汚い、 臭いの3K。 だからこそ美しい漆を精製できた時はうれしいですね」 と語る。 最盛期だった戦前には、 同業者が約30数社あったが、 やがて化学塗料に押され、 現在は2社程度に減った。 今回、 担い手不足で事業を縮小するため、 寄贈することにした。
「合わせ鉢」 は、 数種類の漆を混ぜて調合する時に使い、 直径約1・7㍍もある大きなおけ。 一回り小さい 「くろめ鉢」 は、 精製する際に使用した。 どれも長年の使用で器に漆が染み込み、 味わい深い色合いになっており、 黒江の落ち着いた町並みとぴったり合うという。 三木さんは「こんなふうに飾ってもらえるなんてびっくりで感心しました。 愛着のある道具だっただけに、 もう一度よみがえってくれて大変うれしい」 と笑顔。 寄贈されたおけは川端通りなどで見ることができ、 地元からは 「より漆器のまちらしくなった」 と話題になっている。