城下町和歌山研究の第一人者三尾功さんを偲ぶ

 城下町和歌山研究の第一人者で、 元・和歌山市立博物館館長の三尾功さん=同市堀止西=が1月17日、 死去した。 80歳だった。 学術研究書の他、 「内容は豊かに、 言葉はやさしく」 と一般向けの本も出版。 和歌山城の保存整備など文化財保護にも尽力した。 平成19年に県文化功労賞、 21年に市文化賞、 昨年文部科学省地域文化功労者表彰を受賞。 傘寿記念として昨年11月に出版した 『城下町和歌山夜ばなし』 が最後の著作となった。

 市立博物館の寺西貞弘館長 (58) は、 「城下町和歌山の研究の第一人者でした。 学術研究 『近世都市和歌山の研究』 は学会で高く評価されました。 でも単なる、 がちがちの学者ではありませんでした。 一般市民が楽しく読めてためになる 『城下町和歌山百話』 などで、 歴史の普及に努められた」 と功績をたたえる。
 さらに 「温厚篤実を絵に描いたような方。 研究が好きで、 歴史を解明すること、 分からないことを分かるようにすることを一番の楽しみにしていらした。 そして、 それによって営利や名誉を決して求めない方でした。 お会いしてから三十数年。 私の人生の師です」 と話している。

「内容は豊かに、言葉はやさしく」 
『城下町和歌山夜ばなし』 は、 発掘調査などによる研究の進展を踏まえ、 以前出版した 『城下町和歌山百話』 と 『増補改訂 同』 を大幅に改訂した書。 「近世の幕開け」 「南海の鎮 和歌山城」 「城下町と人びとの生活」 「幕末・維新のころ」 「和歌山市誕生と市民」 に分け、 154話を紹介している。
 例えば、 雑賀衆鈴木孫一はどんな人物か▽見学者や泥棒が横行した和歌山城の治安▽2つあった西浜御殿▽和歌の浦 「芭蕉の句」 の謎▽和歌山の茶道や能、 紀伊藩主が出てくる落語▽ 「小梅日記」 の川合小梅が住んでいた家など。
 三尾さんは、 「和歌山の歴史に興味を持っていただく契機になり、 また、 和歌山の歴史を研究しようとされている方々に、 少しでもお役にたてれば幸いです」 とあとがきに記している。
(平成23年11月10日発行、 発行所・宇治書店470㌻、 定価2100円)

【三尾功】昭和6年(1931) 大阪市生まれ。 13年に現・紀の川市貴志川町に転居し、 和歌山大学学芸学部を卒業。 市立中学校や県立高校教諭、 市教育委員会、 和歌山大学非常勤講師、 市立高松小学校校長などを経て平成3年退職。 その後、 市立博物館館長、 同館名誉館長を務め17年に退職した。
 その間、 和歌山地方史研究会会長、 県文化財研究会副会長、 史跡和歌山城保存整備委員会委員長、 根来寺史編集委員会委員などを歴任。 平成19年県文化功労賞、 21年市文化賞、 23年文部科学省地域文化功労者表彰。
著書に 『城下町和歌山百話』 (和歌山市、 昭和60年) ▽ 『近世都市和歌山の研究』 (思文閣出版、 平成6年) ▽ 『城下町の片隅で』 (自刊、 平成13年) など。 共著に 『和歌山市史』 全10巻 (和歌山市、 昭和50年~平成4年) ▽ 『粉河町史』 全5巻 (粉河町、 昭和63年~平成13年) などがある。