戦争の記憶、短歌でつづる 古屋の中谷さん

 和歌山市古屋の中谷洋一さん(79)が、 戦争前後の苦しい暮らしや思いを短歌と文章でつづった 『わが少年期の歌日記 愛しき日日』 を自費出版した。 発行日を平成24年8月15日とした中谷さんは、 「同年代の方には、 戦争の時代の日々を後の世代に伝えていただきたいし、 語り合いたいと思う。 経験がない方々には、 戦争というものが一少年にどのように関わってきたのかを知ってもらえればうれしい。 ぜひお読みいただきたい」 と話している。

思い出は今もあざやか
赫々(あかあか)と降る焼夷弾
灼熱の雨

少年期は日日飢えいたり
リュック背に
母と歩みし買い出しの道

 中谷さんが短歌を始めたのは70歳を過ぎてから。 「忘れていた記憶が歌を詠み始めるとよみがえってくる。 不意に浮かぶ思い出の断片を記録するのに短歌の形が合っていた」 といい、 「伝統的な短歌ではありません。 演歌調とか、 アニメや劇画のシーンのようだと言われます」 とほほ笑む。

 内容は、 海辺の村だったふるさと古屋の風景▽母の苦労▽戦争の始まりから昭和20年7月9日の空襲、 疎開、 8月15日の終戦▽戦後の飢えと混乱など。

 戦前通った木本小学校、 戦後通った粉河中学、 和歌山中学、 城東中学、 桐蔭高校と、 戦争と学制改革に振り回された学校生活も豊富なエピソードで生き生きと描写。

 戦時中に動員された和歌山の中学生らが集団脱走した 「逃げちゃれ」 事件▽軍需工場へ勤労動員された和歌山の女学生十数名が爆撃で亡くなった痛ましい事件▽身近で見た兵隊の様子▽上陸した米軍▽やみ米を運ぶ同級生▽米国籍を取るため渡米した同級生など、 時代と歴史を語る貴重な資料ともなっている。

 中でも多いのは、 夫を早く亡くし、 働きながら2人の子どもを育てた母への共感と感謝を詠んだ歌。 「おわりに」 で中谷さんは 「私を育ててくれたのは働く母の汗と涙であり、 それが私の生きてゆく力となった」 と記している。

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