がん新治療法を臨床研究へ 和歌山県立医大

 新しいがん治療法として確立への期待が高まっている 「がんペプチドワクチン治療」 の研究開発を進めるため、 県立医科大学 (和歌山市紀三井寺、 板倉徹学長) は全国で初めて、 がん患者団体の寄付による同ワクチンの治療学講座を4月1日に開設する。 全国の研究機関と連携して臨床試験を行い、 早期の製薬化を目指す。

 13日、 同大で会見した新講座の山上裕機教授らによると、 同ワクチンは、 患者自身の免疫力を活用する治療法。 がん細胞を攻撃するリンパ球 (CTL) が、 がん細胞の表面に発現する特有のペプチド (アミノ酸化合物) を攻撃の目印にすることから、 このペプチドを人工的に合成、 投与し、 CTLを増殖させてがんを治療する。 現在の3大治療法とされる手術、 化学療法、 放射線による治療が困難な患者に対する第4の治療法として期待されている。

 新講座は当面、 難治といわれる食道がん、 膵臓 (すいぞう) がんを対象に、 各40人の患者の臨床試験を行う。

 両がんのペプチドワクチンは、 安全性確認などの段階を終え、 製薬化に向けて製薬企業主導による効果の検証段階に入っているが、 現在の対象は、 ペプチドが発現するヒト白血球型抗原がA24 (日本人の約60%) と呼ばれる型の患者のみ。

 新講座はA24とともにA2 (同約20%) も対象とし、 より多くの患者に治療の可能性が広がる。

 研究費はがん患者団体 「市民のためのがんペプチドワクチンの会」 が全国から寄付を募り、 当面は3年間で3000万円を提供する。

 山上教授は 「新しい治療を希望する患者さんの強い思いで設立される講座となる。 研究成果を国内外に発信し、 全国のがん治療の質を向上させたい」。 同会の會田昭一郎代表理事は 「3大治療法で行き詰まった患者に夢と希望を与えられる。 他の種類のがんにも早く波及することを期待している」 と話した。