和歌山市の偉人発信 『山田猪三郎物語』出版

 国産飛行船の製作・初飛行に成功した和歌山市出身の山田猪い三さぶ郎ろう(1863~1913)を子どもたちに知ってもらいたいと、8日、山田猪三郎顕彰会が本『大空へかけた夢 山田猪三郎物語紀州が生んだ航空界のパイオニア』を出版。県と市に計546冊を寄贈した。県内の小・中・高校、大学(和歌山市内は各校2冊ずつ)と、県内49の図書館・図書室などで活用される。

 この日はちょうど猪三郎の没後100年の命日に当たり、出版はその記念事業。猪三郎のひ孫である㈱気球製作所の豊間清社長=東京=や仁坂吉伸知事、大橋建一市長、同会員ら60人が、同市新和歌浦のホテル萬波で出版を祝い、高津子山にある顕彰碑に献花した。
 本は小学校高学年から大人まで楽しめる内容で、和歌浦在住の小学6年生2人が質問しながら猪三郎の生涯をたどる形式。100年前と現在の写真も多数掲載し、飛行船の仕組みも分かりやすく図説している。

 資料集めなどに苦労した3人の著者、同市の御前陽子さん(48)と山本祐佳さん(同)、阪南市の福島節子さん(49)は「人の命を救いたい、人の役に立ちたいと、猪三郎が失敗しても工夫を重ね、次の成功へとつなぐ努力をしたことは、子どもたちに勇気を与えると思う」と話した。

 同会の小林護代表世話人(78)は「この本により猪三郎の業績が広く世に知られ、郷土和歌山の誇りとして、末長く伝えられるよう願っています」と話し、西下博通県教育長と原一起市教育長に目録を贈呈。2人は「大きな志と夢を子どもたちが受け継いでいくよう活用します」とお礼を述べた。

 同会は顕彰碑の耐震補強工事を昨年実施しており、市民や企業からの寄付約287万円が工事費と出版費に当てられた。制作はウイング出版部。本は宮脇書店和歌山店(同市広瀬中ノ丁)で取り扱う。定価2000円。

 本についての問い合わせは小林世話人(℡073・445・0494)。