増加する空き家 トラブル解決に壁

 増加する空き家の問題。総務省は先月末に住宅や土地に関する実態調査結果を公表。県内は住宅全体に占める空き家の割合が、全国で山梨、長野の両県に続いて18・1%と高く、問題があらためて浮き彫りになった。3万1060戸(平成20年総務省調査)と県内市町村で最も空き家が多い和歌山市にも、トラブルの相談が寄せられている。

 同市広瀬中ノ丁の自営業、赤山紘和さん(72)も隣の空き家に困っている一人。5年ほど前に、隣家所有者が突然いなくなった。その後、自宅と隣家の間に植えられた木は高さ15㍍ほどまで成長し、自宅の敷地一部を覆ったことで、大量の落ち葉や実の汁が車に付くなどの迷惑を被っている。

 市に空き家の所有者を尋ねたところ、入院中と返事があったが、連絡先を聞くと「個人情報保護のため明かすことができない」と説明されるなど、制度の壁が立ちはだかった。その後に市は、この所有者から伐採の許可を得るまで動いたが、赤山さんは、「十数万円は掛かるだろう処理費用を自分が負担しなくてはならないのは納得できない」として、伐採に踏み切れていないという。

 市は、昨年4月に施行された「空家等の適性管理に関する条例」に基づき、空き家対策を行っている。昨年度には約100件の情報提供があった。条例では、空き家所有者に対し、「指導」「勧告」「命令」の3段階で改善を求めることができると定めている。また、指導の前段階として、所有者に任意でお願い文を送付するなどして問題解決を目指している。一方で、同条例は、空き家以外の草木などは対象外。赤山さんのケースでは、お願い文を送付することはあっても、それ以上の関与はできず、市による草木の伐採も想定していない。

 担当課の市建築指導課は、「条例に基づいて所有者に空き家を適切に管理してもらうしかない」としている。