土井さんに昭和会賞 絵画界の直木賞
半世紀にわたる歴史があり、若手芸術家の登竜門といわれる「昭和会展」の最高賞「昭和会賞」に、和歌山市の洋画家・土井久幸さん(38)が選ばれた。自然体で臨んだという土井さんは「何の気負いもなく出品し、思いもよらない知らせに自分のこととは思えないほど驚いています」と喜びいっぱいに話している。
昭和会展は絵画と彫刻作品の公募展で、国内の洋画商では最も歴史があるとされる日動画廊(東京都中央区)が主催。今展で50回を数える。
土井さんは独立美術協会準会員、日本美術家連盟会員、県美術家協会会員。平成24年度和歌山市文化奨励賞を受賞している。
昭和会賞はかつて「絵画界の直木賞」ともいわれ、巨匠への第一歩とされている。毎年8月に招待作家選考会が行われ、それを通過した作家が招待作家となり、翌年1月から2月に開かれる展覧会への出品資格が与えられる。
これまでは35歳以下が対象で、土井さんは3度挑戦し1次で選外になっていた。制限年齢を超え諦めていたが、今回は40歳に引き上げられたため、チャンスと思い出品。念願かない初めて選考を通過した。
本年度は絵画18人、彫刻5人の招待作家の他、前年からのシード作家(絵画)3人を加えた26人の受賞対象者により行われた。
絵画部門は全出品者が3点を出品する。土井さんはフランスの日常風景を描いたクレパス画を出品。老人と孫の心の交流を描いた「鐘の音」(50号)、優しい光の「木漏れ日の中で」「穏やかな日」(ともに10号)で、審査員から「若い人の華やかさや派手さ、奇をてらったところはなく、絵画としての本来あるべき重厚な存在感がある。絵画はこういうものだと、私たちは宿題をもらったようだ」と称賛されたという。
自身の作品を「情景画」と表現する土井さんは「自分にできることは、見てくれる方たちの心に寄り添う作品を描くこと。東京での仕事も増えそうですが、自分の作品を全く知らない人たちの心にも届くよう、気持ちを込めて描いていきたい」と話している。
作品は12日まで同画廊で開催中の「第50回昭和会展」で展示されている。