地域資源生かすまちづくり 加太でシンポ
和歌山市加太地区の活性化について考える「第2回地域資源を生かしたまちづくりシンポジウム」が15日、加太小学校体育館で開かれた。「海と山と加太」をテーマに、加太の地域資源の活用方法などについて各分野の専門家らが講演や調査報告を行い、地元住民ら約150人が聞き入った。
加太の魅力を再認識し、内外に発信を目指す地域ぐるみの取り組みで、加太観光協会(利光伸彦会長)などが主催。
日本フルボ酸総合研究所会長の田中賢治さんが「加太における山と緑化」と題して基調講演した。田中さんは、海岸の森林が砂防をはじめ重要な役割を果たし、森林環境の破壊が住民の生活に大きな困難をもたらしてきた歴史を紹介。非常に豊かな加太の海の環境もまた、周辺の山や森林の環境と密接な関係にあることを示し、住民らが行っているアジサイの植栽活動など、適切に人間が手を入れることで森林環境を整えていく重要性を指摘した。
昨年から加太の調査を行っている東京大学生産技術研究所准教授の川添善行さんは「加太の港側調査報告と提案」と題して報告。人々が加太のまちをどのように歩いているかを追った調査から、地元住民と観光客では歩くルートが大きく異なっており、見ている加太の魅力が異なることを示し、その結果を基に取り組み例を提案した。
3カ月程度で「すぐできる」内容としては、散歩ルートの設定を提案。「夕日がきれいな道」「路地を楽しむ道」「おいしい道」などのテーマ設定を示した。
3年程度で「もうすぐできる」取り組みでは、各散歩ルートの接点にレストランを設けることや、空き家を活用して友ヶ島に渡る船の待ち時間などを過ごせる拠点を設けることなどを提案した。
続いて、地域振興や人口成熟問題の研究で知られ、『里山資本主義』などの著書がある日本総合研究所の藻谷浩介さんが講演した。藻谷さんは、地域活性化とは人口が減らなくなること、若者が戻ってきて子どもが生まれ続けることだと指摘。活性化しない地域では「うちには何もない」「そんなのは当地では当たり前」が口癖になりがちとし、「この地域にしかないものは何か、来訪者に教わろう」と呼び掛けた。
さらに、加太のまちを歩いて撮影した写真を示しながら、良い点、改善すべき点を紹介。来訪者がじっくりと歩けるまちづくりをしている全国の各地で、子どもの数が増えている現状を話した。
最後に、登壇した3人に利光会長を加えたトークセッションが行われた。
利光会長は「加太のまちを良くするために、地域が一緒になって取り組んでいる。住民みんなが活躍できる自助、自立のまちを和歌山市の一エリアにつくっていきたい」と話していた。