成長か再分配か、不毛な議論にストップを ―野党再編を目指して
新しい政治をつくるためには、これまでの成功体験とは一線を画する経済政策が必要です。成長か再分配かという議論はすでに古い発想です。
外国と比べて、日本は政治家や官僚を信頼しない度合いが高いばかりか、他人を信頼しない国になっています。政府は、自己責任主義の下、国民を分断する予算配分で、相互不信の社会をつくってきました。何より、所得の多い少ないで給付を決定する「救済型の再分配」が問題です。多くの人は自分を中間層だと思っていますから、再分配は低所得者に自分の税金を使われるという意味で反対。格差是正のための増税には、強く抵抗します。
一方、北欧では、社会保障は普遍主義で、すべての人が対象になる「共存型の再分配」を行っています。彼らも単純に再分配を支持しているのではなく、自分も含めて失業のリスクや高齢者の所得保障を国民全員にカバーすることに賛成で、結果として、低所得者にも給付が行われます。そのため、増税への抵抗感は少なくなります。
たとえば、今回の消費税増税ついて考えてみましょう。
軽減税率の問題点はここでも書きましたが、なぜ、こんなに問題の多い制度が支持されるのでしょうか? 今回の5%の増税の内、4%分は借金の肩代わりで国民生活へのプラスは1%分だけでした。戦後の日本では、減税ばかりで純増税の経験はありません。消費税の導入時も5%への引き上げ時も、所得税減税との抱き合わせでした。ですから、純増税が国民にはきつかったのです。その結果、お金持ちほど得をするなど低所得者対策にならなくても、軽減税率という形の減税を求めたのでしょう。また、安倍政権は政権奪還後ただちに生活保護を約8%カットしました。このような格差を広げる政策を国民が支持したのも、「救済型再分配」が分断を生む証拠です。
社会保障を普遍主義の観点から再構築し、すべての人に負担をお願いし、すべての人に受益をお返しする「共存型の再配分」を提案します。たとえば、医療や教育について、所得制限を付けずに現物給付すれば、増税への抵抗感も薄まりつつ、結果として格差の是正が可能になります。労働力人口が減少し、潜在成長率が0・5%の日本にとって、国民一人ひとりの生産性を上げることでしか成長はないはずです。そのためには、小児医療や幼児教育から高等教育までの無償化によって、人材育成することが重要です。所得の低い層ほど利益も大きいため、格差の是正もできます。「だれもが受益者」という財政戦略です。これまでの日本の政治を180度転換させる大胆な発想ですが、皆さん、いかがでしょうか。