福島とチェルノブイリ 中筋さんが写真展

 原発事故が発生したチェルノブイリ(旧ソ連、ウクライナ)と福島の周辺で写真を撮り続けている和歌山市出身の写真家・中筋純さん(49)=東京都八王子市=の作品展「The Silent Views. 流転」が、3月2日から7日まで、和歌山市の県民文化会館で開かれる。写し出されるのは、誰一人いない沈黙の街。人間不在となった空間で、積み重なる時間の流れや自然の営みが、静かに事故の災禍、重みを問い掛ける。

 中筋さんは智弁学園和歌山高校を卒業後、東京外国語大学へ進学。出版社勤務を経て29歳でフリーの写真家に転身した。2007年からチェルノブイリ原発事故後の街を記録。2011年の東日本大震災で発生した福島第一原発事故後は福島県に通い、街の様子を撮り続けている。

 今回の写真展は、チェルノブイリ事故から30年、東日本大震災から5年がたつ節目に、来年春まで札幌や名古屋など全国10カ所以上で開く巡回展。中筋さんの和歌山での個展は初めて。それぞれの街を横長(幅2・6㍍~7・5㍍)で紹介した、臨場感あるパノラマ写真など約50点を展示する。

 震災翌年に浜通りの撮影を始めた中筋さんは「初めは全貌がつかめなかったが、人が残した土地でも風景が動き出す。震災後2年がたった頃から季節や時間の流れを特に感じるようになり、克明に記録したいと強く思うようになった」と話す。

 福島県の双葉町や大熊町、富岡町などで撮影。商店街や田畑など、人の匂いを感じながらも、そこに人は存在しない震災後の福島の風景は、チェルノブイリと重なって見えた。人の生活が止まった中にも、自然の営みは繰り返されており、放射能災害の恐ろしさやむなしさを感じずにはいられなかったという。

 中筋さんは「福島の原発をめぐる議論ははばかられるような雰囲気になっているが、誰もが当事者になる可能性をはらんでいる。風景は黙して語る。写真展を通じて、原発事故を自分のこととして捉えてもらえれば」と話している。

 午前9時から午後5時(最終日は3時)まで。

中筋純さん

中筋純さん