平井1号墳など指定 県文化財新たに3件

 県教育委員会は26日、和歌山市平井の史跡「平井1号墳及び平井埴輪窯跡群」と田辺市本宮町の天然記念物「ナンキセダカコブヤハズカミキリ生息地」、白浜町の天然記念物「ヨドシロヘリハンミョウ生息地」の3件を、新たに県指定文化財とした。

 2月に行われた県文化財保護審議会の答申を受けての指定で、これにより県指定文化財は577件となった。

 平井1号墳は墳長約22㍍の前方後円墳で、古墳時代後期前半に造られたもの。馬形埴輪や須恵器杯身、紀の川流域特有の技術で製作された円筒埴輪などが出土している。

 埴輪窯跡群は、平井1号墳から見下ろす丘陵裾に位置し、全長7㍍以上の1号埴輪窯跡と全長10㍍以上の2号埴輪窯跡の2基がある。いずれも古墳時代後期ごろが操業時期と考えられ、近接する平井1号墳や東方の大谷古墳へ供給されていたと想定される。

 周辺からは、紀の川下流域の伝統的な技術、河内平野や大和盆地から伝わった新たな技術の異なる技術系統で作られた埴輪が出土している。埴輪窯での多様な埴輪の製作と、その供給古墳が具体的に分かる県内唯一の事例であり、古墳時代後期における埴輪の生産と供給を解明する上で重要と評価されている。

 ナンキセダカコブヤハズカミキリは体長15~22㍉のカミキリムシの仲間。原生林のブナ、ヤマザクラなどの枯木、倒木に生息する。県外での報告例がなく、県内でも田辺市と古座川町にまたがる大塔山周辺でしか報告されていない。生息地が限られており、名称に「ナンキ」が付く県を代表する昆虫であることから、学術的価値が高く、天然記念物に指定して保護を図る。

 ヨドシロヘリハンミョウは体長9~12㍉の海浜性のハンミョウ。幼虫は地表に巣穴を掘り、その入口で餌となる動物を待ち伏せ、餌が通ると巣に引きずり込んで捕食する。成虫は脚と複眼、顎が発達しており、餌に素早く襲い掛かって捕食する。国内では九州から瀬戸内海沿岸部を中心にした河口汽水域の潮間帯に生息。県内では白浜町の日置川河口域に生息し、国外を含めた同種の分布の東限にもなっている。基準標本産地である大阪府の淀川では絶滅したと考えられており、学術上の価値が高い。

平井遺跡2号埴輪窯床面(写真は県教委提供)

平井遺跡2号埴輪窯床面(写真は県教委提供)