大川窯を市民で保存 中村さんが備前焼寄贈
和歌山市と大阪府岬町の県境の山中にある登り窯「大川窯」が、市民有志により保存されることが決まったことを受けて、窯の所有者である和歌山市板屋町の陶芸家、中村実さん(86)らが8日、市役所を訪れ、先月窯出しした高さ40㌢のつぼを寄贈した。
大川窯は中村さんが26年前、備前焼きを極めようと造った幅2㍍、奥行き7・5㍍の登り窯。高齢を理由に中村さんが窯を閉鎖することを考えた際、陶芸教室の生徒らが立ち上がり窯を引き継ぐことになった。5月1日には、中村さん主導の最後の窯の火入れを行い、15日に作品を窯出しした。
市に寄贈したつぼは、「10年に一度の出来栄え」と中村さん自身も評価する、松ヤニの装飾が美しく仕上がった自慢の逸品。窯出しの日には現場に駆け付けたという尾花正啓市長は「今後も、焼き窯を守っていただきたい」と保存活動を応援。中村さんは「同じ物は二度とできないので、備前焼きの良さを感じてほしい」と話していた。