安保関連法の違憲訴え 早大の長谷部教授
和歌山弁護士会(藤井幹雄会長)主催の憲法講演会が9月30日、和歌山市の和歌山ビッグ愛で開かれ、安全保障法制を巡る昨年の衆議院憲法審査会で、集団的自衛権の行使について「違憲」との見解を示した早稲田大学大学院法務研究科の長谷部恭男教授が「立憲主義と民主主義を回復するために」と題して講演し、約150人が聴き入った。
藤井会長はあいさつで「国会で成立しても安保関連法が違憲という事実は変わらない。21世紀になって立憲主義の基礎を考えなければいけないのは悲しい。今日は大いに学んでください」と話した。
長谷部教授は昨年6月の衆院憲法審査会に与党推薦で出席し、集団的自衛権行使を容認した安保関連法案を違憲と指摘し、注目された。
憲法に基き、権力者による恣意的な権力行使を防止する考え方とされる立憲主義について、長谷部教授は「社会に多様な価値観や世界観の存在を認めるのが近代立憲主義」とし、一人ひとりが異なる考えを持つ中で、幸福な社会を築くには、私空間における自由と権利の保障と、民主政治を通じた公益実現への努力が必要と話した。
日本固有の立憲主義があるという意見については「その根拠とされる明治憲法の第4条は19世紀初めのバイエルン憲法(ドイツ)を直輸入したもので根拠がない」と指摘した。
政府が憲法9条の解釈を変更し集団的自衛権の行使を一部容認したことについては、「自衛組織の全否定は非現実的だが、現憲法下では直接の武力攻撃に対する対処のみが可能で、集団的自衛権の行使は認められない」と解説。横畠裕介内閣法制局長官が述べた「存立危機事態のようなことが起きれば集団的自衛権どころではない」との話も紹介した。
行使賛成派の主張に対しては、「日本周辺の安全保障環境が大きく悪化しているとするなら、なぜ限られた日本の防衛力を各地に拡散しようとするのか。政府が具体例として挙げたホルムズ海峡の機雷封鎖や米韓防護の話はどうなったのか」と述べ、アメリカの抑止力を全面的に信頼するのは危険だと指摘した。参加した大阪市立大学2年の増井俊輔さんは「立憲主義について根本から学ぶことができ勉強になりました。集団的自衛権に関する政府の主張が抱える欠陥が理解できました」と話していた。