肝炎患者も多発 日赤ギリシャ難民を支援

 政情不安が続くシリアなどの中東地域から欧州の先進国を目指しながら、ギリシャで足止めされた移民や難民を支援するため、現地で医療活動に当たった日赤和歌山医療センターの古宮伸洋医師(42)が約6週間の任務を終えて帰国。7日に同センターで活動報告し「今後寒くなり、劣悪な環境での生活が続けば、障害者や高齢者の肺炎なども増えると予想される。できる限り早く希望する国へ行けるプロセスを進めることが急務」と話した。

 国際感染症事業部副部長の古宮医師は国際赤十字・赤新月社連盟の要請を受け、9月12日から10月23日まで、ギリシャ北部テッサロニキ周辺のネアカヴァラ、ヘルソーの2カ所の診療所で活動した。

 古宮医師が滞在した両キャンプはいずれも約1000人を収容し、約250棟のテントがあった。フィンランドやドイツの医師や看護師、現地ボランティアたちと協力しながら、子どもから大人まで一日平均39人の診察に当たった。

 古宮医師によると、難民キャンプの設置から半年以上が経過し、劣悪な環境は徐々に改善されつつあったものの、シャワーも水のみ、感染症患者が利用した公衆トイレの消毒が不十分であるなど、衛生管理が十分とは言い難い環境だったという。

 患者の症状は風邪やけが、皮膚トラブルなどが最も多く、虫歯の他、衛生環境の悪さから、シラミやぎょう虫などの病気も多数あった。

 またA型肝炎の患者が多く発生し、多い時で一日5人ほどを診察した。ギリシャは他国からの薬剤の輸入を制限しているために、薬が十分に行き届いておらず、慢性疾患を抱える人が長期間放置されているケースもあり、薬の入手や細かなニーズの対応に苦慮したという。

 古宮医師は「普通の生活を送っていた人が難民生活を強いられ、大きなストレスになっている。そういう点では、これまで経験した海外での災害支援とは少し違い、日本国内でも起こっているような災害支援活動に近いように感じた」と振り返った。

子どもの診療に当たる古宮医師(日本赤十字社提供)

子どもの診療に当たる古宮医師(日本赤十字社提供)