人工呼吸器使用者の災害時支援 研修会
災害時における在宅人工呼吸器療養者の支援について考える研修会が25日、和歌山市紀三井寺の県立医科大学生涯研修センターで開かれ、看護師や保健師ら約40人が参加し、事例を交えて現状と課題などを学んだ。
県や市町村、医療機関などで構成する和歌山神経難病医療ネットワーク連絡協議会が主催。筋萎縮性側索硬化症(ALS)や多系統萎縮症(MSA)についての研究者の解説や、保健所職員による災害に備えた支援計画に関する事例の報告に加え、参加者同士によるグループワークも行われた。
同大神経内科学の村田顕也准教授は、「在宅人工呼吸器使用患者の災害時個別支援計画―神経難病患者の特性を理解して―」と題して講演。ALSやMSAなどの病気の実態や療養上の問題点について映像を交えながら解説し、必要以上の酸素投与や睡眠剤・安定剤の使用は呼吸障害を悪化させるなどと話し、注意を呼び掛けた。
和歌山市保健所保健対策課難病対策班の田中真記さんは「災害時個別支援計画作成における現状と課題」と題して報告。平成27年度から市では在宅人工呼吸器使用者をはじめとする要配慮者への支援対策を本格的に開始し、市高齢者地域福祉課が避難行動要支援者名簿の作成や、地域で避難支援に取り組む関係者への名簿提供を行っていること、市保健所が在宅人工呼吸器使用者一人ひとりについて、呼吸器の使用が常時か夜間のみか、非常用電源はあるかなどを確認し、災害時個別支援計画を作成していると紹介した。
田中さんによると、昨年12月時点で市が把握している市内の在宅人工呼吸器利用者は26人。災害時の安全確保については、非常用電源や移動手段の確保が大きな課題になっているという。田中さんは「個別支援計画の実効性を上げるためには、患者、家族、関係機関が継続的に検討を行うことが大事」と強調した。
災害時個別支援計画の策定に関するグループワークでは、7~8人のグループに分かれ、効果的な支援体制の構築について議論。参加者らは「個人情報の問題はあるが、要支援者の住所を各支援機関がオンラインで共有すべきでは」「機器の操作法を誰が見ても分かるようにしておいたらどうか」などの意見が出されていた。