地域発のイノベーション 雜賀社長が講演
国内外の知的財産関連情報を共有し、関係者のネットワーク形成の機会を提供する特許庁など主催の「グローバル知財戦略フォーラム2017」が東京都の東京ドームホテルで開かれ、独自の精米技術の開発で業界をリードする東洋ライス㈱(本社=和歌山市黒田、東京都中央区)の雜賀慶二社長(83)が特別セッションに登場し、地域発のイノベーションについて約1000人を前に語った。
フォーラムは13、14日の2日間で行われ、特別セッションは「中堅・中小企業の経営者に聞く地域発イノベーションの興し方」と題して2日目に開催。司会を務めた弁理士・弁護士の鮫島正洋さんは、地域発イノベーションとは「地域に存在する技術や産品を中心に、風土や文化を発信し、当該地域や業界の活性化を図ること」だと述べ、雜賀社長と永井酒造㈱(群馬県川場村)の永井則吉社長(44)が、自社のイノベーションについて語った。
雜賀社長は、昭和36年に開発し、米と石粒を分けることで精米の歴史を変えたといわれる発明「トーヨー撰穀機」を動画で紹介し、「もうけるために何をするか」ではなく、「社会に役立つために何をするか」が発明の際のポイントだと強調した。
金芽米などを生み出した米の研究については、現代の米が精米技術によって宝の栄養成分が失われているとまず指摘。栄養価は高いが食味が劣る「糠(ぬか)」を玄米から除いた「白い米」は「粕(かす)」になると漢字から解説し、糠を残しながら食味の良い米の開発を実現してきたことを解説すると、会場からは感嘆の声が上がった。
また、和歌山県は米の生産量が少なく、全国各地の米が流通していることから、比較検討しながら米の研究に取り組みやすい土壌があったとし、地域性が革新的な精米技術の開発に結び付いていたと振り返った。
続いて講演した永井社長は創業130年の老舗酒造の6代目。日本酒が乾杯時にも用いられるようにと開発した発泡性清酒は特許を取得している。
同社の製品は海外の一流レストランでの引き合いも多いといい、製品の発信に当たって、製品の説明と共に、故郷の豊かな自然をタブレット端末などで顧客に示したことが功を奏したと強調した。
今後について永井社長は「人、場所、文化をつなげることで、短期的なイベントに終わらせずに地域の発展を図りたい」と話し、雜賀社長は「米食の良さをさらに発信して消費量を増やし、日本の水田を守りたい」と述べるとともに「社会に必要なものをこれからも開発したいので、死んでいる暇はない」と力強く話していた。