心眼で捉えた黒白 坂田稔さん卒寿写真展
全日本写真連盟総本部顧問、和歌山市石橋丁の写真家・坂田稔さん(90)の卒寿写真展「創造の黒と白」が13日まで、同市の県民文化会館で開かれている。
「人間追求52年の集大成」と位置付けた展覧会。大・中・小展示室に、国内外でフィルムで撮影したモノクロ写真約240点が並ぶ。
坂田さんは昭和28年から本格的に写真を始め、働く人に焦点を当てたヒューマンドキュメンタリーを追求。国際写真サロンや全日本写真展などで多数の入賞・入選を重ねてきた。
会場に並ぶのは、同市中之島の鋳物工場で汗を流す人の姿や海南市の和傘職人、雪国で除雪作業をする女性たち、沖縄で戦禍を耐えた老女の鋭いまなざしを捉えたものなど。海外作品ではネパールやインド、パキスタン、中国の商人や農夫など、ひたむきに生きる人々のたくましい姿を写し撮っている。
坂田さんは「大切なのは、ひらめきと洞察、表現力と体力。瞬間を自分の心の目、心眼で捉えなければ見る人には伝わりません」。
そして「写真は時代を写し、人の心に訴え掛けるものでありたい。写真の本来の良さはモノクロ表現にあり、撮る者の責任として『この時代にこういうものがあった』と未来に伝えていきたい」と話す。
この他、暗室テクニックを駆使したソラリゼーション作品、太陽光を生かして撮影した、まるで心臓の鼓動が聞こえてきそうな不思議な造形の最新作「クリスタル・イマジネーション」も並び、坂田さんは「表現は無限大。まだまだこれからも撮り続けますよ」と意欲的に話している。
午前9時半から午後5時(最終日は3時)まで。