医師の偏在解消を 県が研修費の貸与制度
県は、県内の公的病院で特定の診療科に医師が集中する状況の解消に力を入れている。昨年度、産科医確保に向けた資金貸付制度を導入したのに続き、本年度は特に医師が少ない小児、精神、救急の3科について、県立医科大学の県民医療枠を卒業し、卒業後3科に進む医師に対して研修資金150万円を貸与する制度を導入した。卒業後、県内の公的病院などで9年間勤務した場合は返還を免除する。
県が昨年度に導入した、産科医を対象とする研修資金貸付制度は、臨床研修を終えて県内の公的病院に勤務した若手医師に対し2年間で300万円、県外から県内の公的病院に赴任した産科医に対しても2年間で500万円を貸与するもの。貸与期間終了後、2年間勤務した場合は返還が免除される。前者のケースについてはすでに対象となった人がいる。
県医務課によると、県内では和歌山市に医師が集中し、特に紀南地方で医師が十分に確保できていない状況にあり、中でも産科や救急科などは医療ミスに伴う訴訟リスクの問題や勤務時間の長さなどから希望する医師が少ないという。
医師の確保に向け、県は県立医科大学医学部医学科の定員数を平成20年度から段階的に増員。定員は取り組みを開始する前の60人から現在は100人に増えている。増加した定員の4分の3を特別枠とし、卒業後はへき地医療に携わる「地域医療枠」と、卒業後は県内の中核病院に勤務する「県民医療枠」を設置。「地域医療枠」の学生に対しては、自宅生に月額10万円、下宿生に同15万円を貸与している。
「県民医療枠」の在学生や卒業生に対する支援も充実させようと、同枠を卒業し、小児、精神、救急の3科に進む医師に対して、短期留学などの研修費用150万円を貸与する制度を新設した。
こうした取り組みに対しては、医療の現場からも高く評価する声が寄せられているといい、制度の周知が今後の課題。資金貸与制度の申し込みは随時受け付けており、同課は「ぜひ制度を積極的に活用し、県内で勤務していただきたい」と呼び掛けている。