遠隔医療に次世代通信 5G県内で実証試験
国と通信事業者などが共同開発を進めている次世代の高性能移動通信システム「5G」の実証試験が本年度、県内で行われる。10月ごろから県立医科大学付属病院と日高川町の診療所を結ぶ通信回線に導入し、高精細な映像による診断などについて検証する。12日には試験を行う㈱NTTドコモと県、同大の三者が県庁で実施協定を締結した。へき地の医療環境の充実に向けた第一歩として期待される。
5Gは、現在の4Gに比べて最高伝達速度が100倍になることに加え、多くの物がインターネットでつながるIoTの時代に合わせ、同時に接続できる端末数が100倍に増え、タイムラグが減少するなど、通信環境の飛躍的な向上が期待されている。
医療や交通、物流などさまざまな分野で活用が想定され、政府は平成32年までの実用化を目指している。現時点で基礎実験はほぼ終了しており、NTTドコモは首都圏以外では初めてとなる総合的な実証試験を県内で実施する。県によると、遠隔地の医療機関をつなぐ通信システムの整備など、ICTの活用に対する県の積極的な姿勢が評価されたという。
県内での実証試験は、県と同社が協力して10月ごろから来年3月まで行う予定。県内のへき地診療所と県立医科大学を結ぶ遠隔医療支援システムに5Gを導入し、高精細な映像(4K)をリアルタイムで伝送する。
対象となる診療所は日高川町の山間部に位置する国保川上診療所。高精細な映像の導入により、皮膚疾患などの病状に対する正確な把握が期待される他、診療所と同大の医師同士によるやり取りがスムーズになり、映像や会話のタイムラグが減少して円滑なコミュニケーションが実現するとみられ、遠隔医療の向上への効果を検証する。
同診療所は皮膚疾患の患者がおり、対象施設に選ばれた。医療分野で実証試験が行われるのは県内が全国初で、患者が目の前にいるような精細な映像で診断ができるという。
協定締結式には、県企画政策局の田嶋久嗣局長とNTTドコモ先進技術研究所の滝田亘所長、県立医大地域医療支援センターの上野雅巳センター長が出席し、協定書に署名した。
田嶋局長は「大変うれしく思う。(試験が)成功するように最大限協力していきたい」と喜びを語り、滝田所長は「フィールドを提供していただきありがたい。さまざまな症例を通じて、効果が実証できることを期待している」と抱負を述べ、上野センター長は「悪性黒色腫(メラノーマ)の治療にも有効ではないか。へき地の診療所で働く先生の支援になればと思う」と期待を示した。