埋蔵文化財の調査成果を公開 風土記の丘で
県文化財センターの発掘調査の成果を公表する「紀州のあゆみ―県内埋蔵文化財調査成果展―」が7月2日まで、和歌山市岩橋の県立紀伊風土記の丘で開かれている。発掘調査について広く知ってもらうため毎年実施。昨年調査した県内の遺跡のうち、県指定文化財など8カ所の資料約270点を展示している。
今回展示しているのは、豊臣秀吉の根来攻めに遭った根来寺遺跡(岩出市)や、弥生時代末から古墳時代初頭の集落が残る相方遺跡(和歌山市)など時代も場所もさまざま。
田辺市の仮庵山経塚群は今回の展示で唯一の県指定文化財。鬪雞神社の背後にある権現山から発掘された。経典を埋め、土を盛り上げて周りを石で囲った平安時代末から鎌倉時代にかけての経塚群で、熊野三山を管理・統括していた熊野別当が先祖の追善供養のために造営したと考えられており、展示では経典を入れる銅筒や、一緒に埋納されたすずり、青白磁の合子などが並んでいる。
また、全国的にも発掘調査があまり進められていない埴輪(はにわ)窯の調査成果も展示。和歌山市の複合遺跡、平井遺跡と平井Ⅱ遺跡では、県内初の埴輪窯発掘調査を行った。窯から発掘された埴輪や、古墳時代以降の層から出土した埴輪などが埴輪窯のパネルとともに展示されている。
同センターの加藤達夫さんによると、埴輪窯のような生産跡は、供給先などを調査することにより祭祀遺構につながる。埴輪の粘土の組成を分析し、他の遺跡の埴輪と比較することで、平井遺跡で作られた埴輪がどこで使われたかが判別でき、当時の勢力図なども見えてくるという。
発掘された資料の他、かつらぎ町の中飯降遺跡の剥ぎ取り移設の様子もパネルで展示。同遺跡で発掘された直径約15㍍の円形の大型竪穴建物は西日本でも数少ない遺跡で、その貴重さから保存されることとなった。シリコン樹脂で表面を固め、剥がして復元した大掛かりな移設の方法などが説明されている。
展示は午前9時から午後4時半(入館は4時)まで。月曜休館。来年1月20日からは有田市郷土資料館でも行われる。