家康紀行(24) 菩提寺「龍潭寺」と名勝庭園
前号ではことしの大河ドラマの舞台で、大河ドラマ館が開設されている浜松市北区の気賀駅を取り上げた。井伊氏発祥の地である井伊谷(いいのや)の最寄駅で、ここから多くの観光客が、井伊氏の菩提寺である龍潭寺(りょうたんじ)へと向かう。今週は「井伊谷」と「龍潭寺」を紹介したい。
龍潭寺は臨済宗妙心寺派の寺で、天平5年(733)に行基により開かれたとされる。元禄3年(1560)の桶狭間の戦いで戦死した井伊直盛(直虎の父)の戒名から、龍潭寺と改められたという。井伊氏の歴代当主の墓があり、生前に結ばれることのなかった直親と直虎の墓が隣り合って祭られている。
寺には井伊氏から拝領した品々が収められ、江戸時代建立の本堂や山門など伽藍6棟が静岡県指定有形文化財に指定されている。
また、約1万坪の境内は緑豊かで「龍潭寺庭園」として国の名勝に指定。江戸時代初期に造園された池泉鑑賞式庭園で、不老不死や子孫繁栄を願い、池の両側に守り神とされる仁王石、正面に坐禅石、中央に守護石が配置されており、背景には山の峰と山脈が木々で表現され、手前の池は海を、多くの石組と築山で鶴亀を表している。春は桜やサツキ、梅雨には紫陽花、秋には紅葉、冬には梅や椿が咲き、四季の変化により異なる表情を見せてくれる。
井伊氏の歴代当主や、次郎法師としてこの寺へ出家した井伊直虎も眺めた庭園。時が止まったような静寂な空間で、歴史に思いをはせてみてはいかがだろうか。
(次田尚弘/浜松市)