最期の在り方問う 看取り描く『いきたひ』

自宅での看取りをテーマにしたドキュメンタリー映画『いきたひ~家族で看取る~』上映会と、監督の長谷川ひろ子さん(53)の講演会が7日、和歌山市楠本の喜望園で開かれた。映画は、夫を看取った長谷川さんと家族のありのままの記録を基にした作品。超高齢化、多死社会を迎えようとする中、最期の在り方に、どのように向き合うべきかを問い掛けた。

川永地区社会福祉協議会が主催し、地域の約50人が耳を傾けた。

薬学博士だった夫の秀夫さんは、末期の耳下腺がんと診断された。生還を信じ、闘病生活を撮影していたが平成21年、自宅で家族が見守る中、47歳の若さで息を引き取った。

長谷川さんは、死にゆく人に寄り添う「看取り士」の柴田久美子さんとの出会いをきっかけに、全くの素人ながら映画の制作を決意。大切な家族を看取ったさまざまな人へのインタビューに、夫との日々の記録を交え、27年に映画が完成した。全国各地で上映会と講演会を開いている。

講演で長谷川さんは、自身の体験を振り返りながら、タイトルには「行きたい」「生きた日」「生きた灯」など、さまざまな思いを込めたことを明かした。

自宅で療養中、呼吸困難な状態に陥り、すでに医師からは手の施しようがないとされていた中、救急車を呼ぶか、このまま自宅で看取るかの選択を迫られ、4人の子どもたちと共に家族で決断。「家では家族の一人で終われるが、病院では患者で終わってしまう。『どう死なせないか』ではなく『どう生ききるか』。救急車を呼ばなくてもいいという選択があることをもっと啓蒙(けいもう)しなければいけないと思う」と話した。

映像には、亡くなった夫に添い寝する長谷川さんの姿も。それを撮影する長女との会話に悲壮感はなく、「畳の上に生と死が並んである、日常の中に死というものはある、あったんだということを伝えたかった」と振り返った。
その他、家にいるという感覚が人を癒やすこと、その人らしく生ききる(息切る)ことの大切さなどを話した。

在宅での看取りを語る長谷川さん

在宅での看取りを語る長谷川さん