江戸時代の絵の具箱 県立博物館の企画展
200年前の絵の具箱を拝見――。県立博物館(和歌山市吹上)で、夏休み企画展「のぞいてみよう!えのぐばこ」が開かれている。9月3日まで。江戸時代の和歌山で活躍した画家・真砂幽泉(1770~1835)と桑山玉洲(1746~1799)の2人が使っていた画材道具を中心に、びょうぶや軸作品など27件約300点を展示。同館の袴田舞学芸員は「どの画材を使って描いたのか、思いをめぐらせながら展示絵画を楽しんでもらえれば」と呼び掛けている。
絵画の制作過程や画家のこだわりを読み解く展覧会。幽泉の道具箱はたんす型で、筆や顔料、絵皿など一式がそろう。玉洲の絵の具箱は漆塗りのものと、雲をかたどった中国風のデザインの持ち手などが特徴の、小型のたんすのような箱の二つが伝わる。
11種類もの墨や、小さな粉入れ、使いかけの粉末絵の具など、当時の息遣いが感じられるもので、袴田学芸員は「仕事として描いていたような幽泉の画材用具は機能性重視。一方の玉洲は高そうでかっこいいものをそろえ、中国趣味が表れていて、比べてみるのも面白いです」と話す。
実物と同じ大きさで描いたびょうぶの下描き、「他人には貸さぬよう」との旨の注意書きがある「ネタ本」とも思われる冊子もあり、あまり表には出ない絵画制作の過程をうかがい知ることができる。
その他、玉洲が集めて参考にした中国の書画、仕上げに押した2人の印章なども紹介。
来館した、ともに市立和歌山高校デザイン科1年生の奥野愛矢さんは「持ち歩く道具も多くて大変だったはず」、山口楓さんは「道具の使い方が難しそう。今と違い、絵を描くにも時間や手間がかかったんだろうと思います」と話していた。
学芸員による展示解説は20日、26日、9月3日の午後1時半から。問い合わせは同館(℡073・436・8670)。