群舞で2度目の最高賞 フラメンコ知念さん
和歌山県和歌山市のフラメンコ舞踊家・知念響さん(37)が、東京都内でこのほど行われた日本フラメンコ協会主催の第26回新人公演「フラメンコ・ルネサンス21」の群舞の部で最高賞の「奨励賞」を受賞した。若手の登竜門として知られる大会で、同部の奨励賞受賞は県内出場者で初めて。知念さんは23年にも同大会ソロ部門で県内初の奨励賞に輝いており、6年ぶり2回目の栄冠となった。
群舞を踊ったメンバーは、知念さんと石川慶子さん(名古屋市)、漆畑志乃ぶさん(京都市)の3人。全員が同大会ソロ部門で奨励賞を受賞した経験がある実力派で、27年からスペイン語で調和を意味する「Armonia(アルモニア)」のチーム名で活動してきた。
受賞した群舞は、悲痛な叫びを表現する歌に題材を得た作品「マルティネーテ・イ・シギリージャ」。無伴奏の部分はバストン(ステッキ)を使いながら踊る構成で、選考委員からは「熱のこもった演技は高度で見応えがある」などと高い評価を得た。
知念さんは、県内のフラメンコ芸術の先駆者として知られる和歌山フラメンコ協会会長・森久美子さんの次女。森さんは母であり、フラメンコを学んだ師匠でもある。「今回の受賞を一番喜んでくれたのは母です。私が今できる唯一の親孝行は結果を出すことだと思っています」と知念さんはほほ笑み、受賞を喜ぶ一方で、「コンクール出場は現実と結果を突き付けられる怖いもの。選考委員の言葉は心に突き刺さって抜けない時があります。だからこそ成長できますし、痛みを伴わない成長はありません。これからも真摯(しんし)に踊りと向き合い、人の心に届くフラメンコを踊っていきたい」と決意も新たに話している。
先月下旬には、知念さんが主宰するフラメンコスタジオの発表会が和歌山市内であり、「アルモニア」のメンバーがそろって受賞作を踊った。和歌山での披露は初めてで、3人の踊りを楽しみにしていたファンが数多く訪れた。照明を落とした舞台はさながらスペインのタブラオ(ステージ)のような雰囲気に包まれ、3人がステッキを手に踊ると会場は静まり返り、酔いしれるように見入った。
観客の一人は「力強い靴音が響き渡り、独特の雰囲気でした。迫力ある素晴らしい踊りで感動しました」と話していた。