自愛に満ちた仏様 海南の田原さん油彩展

 和歌山県海南市の田原映子さん(84)の油彩展が30日まで、和歌山市の県民文化会館小展示室で開かれている。

 個展は初めて。仏像を題材にした100号の大作13点が並び、田原さんは「慈愛に満ちた仏様の絵を見て和やかな気持ちになり、何か通じるものがあればうれしいです」と笑顔で話している。

 田原さんは元中学校の家庭科の教諭で、県美術家協会会員、海南市美術家協会会員。約40年前、職場に絵の指導者がいたことをきっかけに描き始めた。平成4年に海南市美術展市長賞、16年に県展で知事賞を受賞している。

 仏像を描くようになったのは20年ほど前から。旅先で目にすることが多く、特に阿修羅の美しさに強く引かれたという。今は亡き夫が退職後に宗光寺(海南市溝ノ口)の住職となり、現在も暮らしの中で仏様と対面する毎日で「ご縁があったんでしょうね」とほほ笑む。

 田原さんは仏像をそのまま描くのでなく、その内面や温かい心を大切に、周囲に曼荼羅(まんだら)やハスなどを添えて自由に物語を展開。「仏像の表情はオリジナルなものもあり、モダンな仏像だとよく言われます」。

 県展で知事賞に輝いた「幽艶Ⅰ」は有田市の月光菩薩立像を中央に、迫力のある仏頭や雲に乗った菩薩を表現した作品。その他、吉祥天と法隆寺の壁画を融合させたもの、穏やかな表情で幼児を抱いた三井寺の鬼子母神(きしもしん)などが並ぶ。

 田原さんは「まだまだ描きたいものがいっぱい。大きなものは難しいですが、これからも出会いを大切に描き続けたいですね」と話している。

 午前10時から午後5時(最終日は4時)まで。

穏やかな作風の大作が並ぶ会場で笑顔の田原さん

穏やかな作風の大作が並ぶ会場で笑顔の田原さん