東京藝大とBPhが協定 澤学長喜びの調印

 東京藝術大学は23日、世界最高峰のオーケストラの一つ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の団員養成を目的とする「カラヤン・アカデミー」と人材育成に関する協定を締結した。同大の特別選抜者が同アカデミーに2年間留学する制度を設けるもので、世界初の試み。和歌山県和歌山市出身の澤和樹学長は「在学生、これから音楽家を目指そうとするさらに若い世代に夢を与える大変大きな意味を持つ」と話している。

 ベルリン・フィルハーモニー・カラヤン・アカデミーは、20世紀のクラシック音楽界を代表する存在で、同楽団の芸術監督を務めた世界的指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンが1972年に設立。世界中から才能のある若手音楽家が集まり、同楽団の首席奏者らが指導に当たっている。修了生の多くが世界的に有名なオーケストラで団員となっており、現在の同楽団員の約3分の1もアカデミー出身者が占めている。

 今回の協定により、アカデミーのバイオリン部門に1人の東京藝大枠が設けられる。27歳以下の同大音楽学部卒業生を対象に、ベルリン・フィル楽団員が審査する実技試験を7月に行い、決定した特別選抜者は8月下旬からアカデミーに派遣される。授業料全額と渡航費の一部は、カレーハウスCoCo壱番屋創業者の宗次德二氏の寄付で支援される。

 同大は国際舞台で活躍する傑出した音楽家育成を実現するため、澤学長が音楽学部長時代の2015年度から和歌山を含む全国各地で、各世代の子どもたちを対象とした英才教育プログラムを展開。今回の協定により、世界トップアーティストの戦略的育成に向けた一貫型人材育成プログラムが構築されたとしている。

 協定の調印式はベルリンの在ドイツ日本国大使館で行われ、澤学長とアカデミーのペーター・リーゲルバウア代表が協定書に署名した。

 澤学長は、最近の若者の音楽離れ、芸術離れに強い危機感を覚え、継続した人材育成に力を注いできたことを紹介し、世界的人材の輩出につながる今回の協定について「特別な喜びを感じている」と話した。リーゲルバウア代表は「私の将来の夢は、このプロジェクトにより入学したアカデミー生がベルリン・フィル楽団員になること」と期待を寄せた。

協定書を手にする澤学長㊨とリーゲルバウア代表(東京藝大提供)

協定書を手にする澤学長㊨とリーゲルバウア代表(東京藝大提供)