鈴木屋敷の復元本格化 藤白神社で安全祈願
全国に約200万人いるとされる鈴木姓のルーツ、和歌山県海南市藤白の藤白神社(吉田昌生宮司)内にあり、老朽化していた「鈴木屋敷」が、復元に向けて動き出した。7月中旬には解体工事が行われることになり、1日、同神社で安全祈願祭が執り行われた。関係者は「鈴木姓の活躍の歴史を伝え、屋敷を海南市の宝に」と期待し、工事の無事を願った。
鈴木屋敷は、平安時代に熊野から移り住み、約122代続いたといわれる鈴木氏が生活した屋敷。鈴木氏は神官を受け継ぐ家系で、藤白を拠点に全国に熊野信仰を広めたと伝わる。鈴木姓の総本家であるとされるが、1942年に当主の鈴木重吉が亡くなり、一族は途絶えた。
江戸後期に建てられたとされる木造家屋は老朽化が進み、崩壊寸前の状態に。地元商工会や同神社の総代らが「鈴木屋敷復元の会」を立ち上げ、整備に取り組んできた。
この日の神事では、拝殿で関係団体の代表者らが玉ぐしを奉てん。屋敷前で同神社の神職がはらい清めた。
復元にかかる費用は約1億3000万円。半分は国などから補助を受け、残り半分は寄付を募る。全国の鈴木さんに協力を呼び掛け、今後は地元企業にも積極的に働き掛けをしていくという。
復元整備のための委員会も発足。専門家に意見を求めながら、江戸時代に編さんされた『紀伊国名所図会』に描かれた鈴木屋敷の様子を参考に、整備を進める。
復元される建物は木造平屋の本瓦ぶき、延床面積137平方㍍。屋敷には鈴木家の関連資料の展示や茶室の設置などを予定し、2021年度の完成を目指す。敷地内にある、貴重な曲水泉式の庭園の整備も併せて行う。
同神社の総代長で「藤白鈴木会」事務局長の平岡溥己(ひろみ)さん(81)は「鈴木の活躍の歴史はこの場所から始まった。全国の鈴木姓のふるさとは、ここなんだと伝え、海南市のまちおこしにもつなげていきたい」と思いを新たにしていた。