二科会写真部展で最高賞 有田川の平松さん

全国規模の公募展「第66回二科会写真部展」で、1万4499点の応募の中から、和歌山県有田川町下津野の平松正大(せいだい)さん(78)の作品「人形遣い」が最高賞にあたる「二科賞」に輝いた。2度目の出品での受賞に、平松さんは「まさかと耳を疑いました。最高の写真を撮らせていただき、身に余る光栄」と喜びいっぱいに話している。平松さんを含め、県内で3人が入賞した。

受賞作は、上富田町の三谷弘さんを撮影したもの。視線を落とし、人形の髪を丁寧にとかす姿が、暗がりの中で浮かび上がる印象的な作品。

平松さんは、写真家の照井四郎さん(70)が主宰する「熊野写真塾」に参加。数人で昨年の1月、三谷さん宅を訪ねて撮影した。

90歳近い三谷さんは元小学校の教諭。人形を収集、自らも制作し、公民館などで劇を演じてきたという。これまでの背景を聞き「深く刻まれたしわにも、積み重ねた人生の深さが感じられました」と平松さん。たくさんの人形たちに囲まれ、身動きも取りづらいような空間で、さまざまな角度から写真に収めた。「柔らかな雰囲気の方で、人形を扱う所作の一つひとつから、慈愛が伝わってくるようでした」と振り返る。

平松さんは大学時代に写真部に所属。産婦人科医で、分娩を扱う忙しい毎日だったために、写真を楽しむ時間はなかったが、5、6年前から再び本格的に撮るようになった。

ほのぼのとした生活の一こまや、ハッとするような美しい一瞬をカメラに収めてコンテストなどに応募。「自分の写真人生に責任を感じます。今回の賞は、三谷さんと照井さんのおかげで、偶然私が頂けたようなもの。これからも、皆さんに認めてもらえるような写真を残したいですね」と意欲的に話している。

この他、県内では中筋孝さん(69、和歌山市朝日)、新家益代さん(67、有田川町西ヶ峯)の作品が入賞。大阪市立美術館で開かれる巡回展(10月30日~11月11日)で展示される。

二科賞に輝いた「人形遣い」

二科賞に輝いた「人形遣い」