乳がん自己検診を 早期発見のポイント聞く
日本人女性の11人に1人がかかるとされ、女性のがんの中で最も多い「乳がん」。最近は著名人が罹患(りかん)を公表するなど、社会的な関心も高まっている。乳がんは、自分で見つけることができる数少ないがんの一つで、「大勢の人が早期発見で助かるがん」でもある。日赤和歌山医療センター(和歌山市)乳腺外科の芳林浩史部長(46)に、早期発見・早期治療に重要なセルフチェック(自己検診)などについて聞いた。
日本では、乳がんは40代から50代の女性に特に多い。予防には生活習慣を見直し、改善することが重要。適度な運動習慣を身に付け、野菜を多くとり、禁煙はもちろん、お酒も適量、肥満にならないよう、適正な体重を維持することで発症のリスクを下げられるという。
早期発見・早期治療には、毎月の自己検診に加え、マンモグラフィーなどの画像検査を取り入れた乳がん検診を定期的に受けることが大切。しこり2㌢以下でリンパ節に転移のない「早期」で治療すれば、5年生存率は90%以上とされている。
乳がんは、早期ではほとんど痛みがなく、しこりや乳頭分泌で発見されることが多い。最近は自分でしこりに気付く場合が多く、診察に来る人の60%が自己検診で見つけたという統計もあるという。一般的には、1㌢以上で触れて分かる大きさといい「『いつもとは違う乳房を見つける』という意識で、月に1度はセルフチェックを」と呼び掛ける。
行う日の目安は毎月、生理が終わって1週間前後。閉経後の人は月に1度、日を決めて行うと良いという。入浴時などに指の腹を滑らせ、硬いしこりがないかどうか調べる。定期的にチェックすることで普段の乳房の状態が分かり、変化に気付きやすくなる。
まれに、しこりをつくらない乳がんもあるという。また、しこりがあっても良性のものも多く、少しでも気になった場合は、かかりつけ医などに相談し、早めの受診を勧めている。
検診はマンモグラフィー検査を基本とするが、乳腺の密度が高く病変が見つかりにくい場合(高濃度乳腺)もあり、超音波(エコー)検査を併用することで、早期乳がんの発見率が上がることが分かっている。
国は40歳以上の女性を対象に、2年に1度の検診を推奨。ただ、日本の女性の乳がん検診の受診率(過去2年間に受診した人)は44・9%(2016年厚生労働省調査)にとどまり、早期の人を見つけられていない現状にあるという。県の乳がんの受診率は30%に満たない。
自治体の助成を受ければ、無料から数千円の自己負担で検診ができる。同センターでは、若い世代にも検診に関心を持ってもらおうと、ことしは岩出市と協力し、30代を対象に無料で乳がん検診を実施。また、院内で市民向けのフォーラムを開き、乳がんをいかに早く見つけ、治療するか、体験者の交流などを含め、患者同士が思いを共有し合う場を設けた。
芳林部長は「乳がんは比較的発育が遅く、死亡率は他のがんに比べて低い。その分、しっかりと治療ができるということ。自己検診で、自分で触って自分の乳房を知ることが大切」と強調する。
芸能人が乳がんを公表したりするたびに、病気への関心が集まり、受診する人が一時的に増えるという。芳林部長は「潜在的に気にしている人は多く、不安になって皆さん検診を受けられますが、乳がんの発生率は一定。過度に心配し過ぎずに、気軽に検診を受けてもらいたいですね」と話している。