ブドウハゼのDNA一致 高校生が研究報告
かつて和歌山県指定の天然記念物だったが、現在は枯死したとされている紀美野町松瀬地区のブドウハゼについて、2017年にりら創造芸術高校の生徒が聞き取り調査を基に原木らしき木を発見したことをきっかけに、再指定に向けた調査が進められている。15日に同校で、共同研究している県立向陽高校の生徒による発表会があり、原木らしき木と、原木から増殖したと考えられる栽培種のブドウハゼのDNAが一致したことが報告された。
ブドウハゼの原木は1934年に県天然記念物に指定。『県史蹟名勝天然記念物調査会報告第13輯』(同年刊)によると、原木は同地区の山林に鳥類が運んできた種から発芽したと考えられ、一般のハゼの木と比べて実が大きく、房のように実ることからブドウハゼと命名。木から採取される油が良質で、和ロウソクの原料として高値で取り引きされたため、1885年ごろから種や苗木を全国から望まれるようになり、原木の生育は阻害され、「樹勢不良ニシテ梢枯著シキヲ見ル」状態となっていた。
1958年には新条例に基づく申請がなされず、天然記念物の指定から自然消滅。その後の記録では、85年発行の『野上町誌下巻』に「現在枯死してその跡形もない」と記述されていた。
今回のDNA調査は、近畿大学生物理工学部や県海草振興局林務課の協力で行われた。昨年7月10日、向陽高環境科学科の2年生5人は、紀美野町東野で栽培種のブドウハゼの葉を採取。約4カ月にわたり、DNAを抽出し増幅させるPCR法や電気泳動実験などにより分析し、た結果、原木らしき木と栽培種の葉に共通したDNAがあることが分かり、「発見された木は原木である」と報告した。
研究機関が参加したブドウハゼに関する調査は、県林業試験場による樹齢調査に次いで2例目。樹齢調査では、原木とみられる木の樹皮側約5㌢で採取した木片は80~90年が経過していると分かり、記録と一致した。
これらの調査により、発見された木はブドウハゼの原木である可能性がさらに高まった。原木であれば樹齢172年を超える日本最古のブドウハゼということになり、関係者は県教育委員会文化遺産課への再指定申請を目指している。
DNA調査に協力した近大生物理工学部植物育種学研究室の堀端章准教授は「研究はきっかけが重要であり、高校生の発見が発端となったことは意義深い」とし、りら創造芸術高の生徒らは「私たちの聞き取り調査が科学的な根拠で裏付けられてうれしい」と話していた。