ヒダリマキガヤ群が県天然記念物に 紀美野

和歌山県教育委員会は7日、県指定文化財(天然記念物)に「紀美野町のヒダリマキガヤ群」を指定した。冬でも凍らない油の原料となり、高野山で灯明用に珍重された歴史があるなど価値が高く、保護を図る。紀の川市麻生津中の「しらかしの巨樹」と紀美野町田の「しらかしの老大樹群」は、昨年9月の台風21号で根元から倒れたため、天然記念物の指定を解除された。今回の指定と解除により、県指定文化財は581件となった。

ヒダリマキガヤは常緑針葉樹であるカヤの一品種。左巻きのらせん状沈線をもつ種子が多いことが名前の由来となっている。種子に脂肪分が多く含まれることから、灯明用や食用の油を作るために各地で栽培され、特に紀美野町は全国的にも多くのカヤが群生している場所として知られ、貴重なヒダリマキガヤも多数あるとされてきた。

同地域は高野山との関わりが深く、カヤの種子や油を貢納し、冬でも凍らないカヤの油は珍重されていた。種子が大きく効率的にカヤ油を収穫できるヒダリマキガヤが、意図的に多く植えられたと考えられている。

2015~17年度に町教委が個体数を調査。分布調査と種子の計測調査を行った190本のカヤのうち、ヒダリマキガヤと考えられる個体が25本、ヒダリマキガヤの可能性が高い個体も20本あり、地域に高い密度で分布していることが分かっている。

地域の人が大切に扱って残されてきたものであり、学術上の価値が高く、群としての希少性もあることから、県指定天然記念物として保護していく。

解除となった「しらかしの巨樹」は、高さ20㍍以上、樹齢約500年と推定され、紀の川市周辺地域では珍しい木として1958年に指定。「しらかしの老大樹群」は同じ樹種が集団で残っている貴重さから同年に指定された。当初は5本だったが、枯れるなどして最後の1本だけが生育している状態だった。

紀美野町のヒダリマキガヤ(写真は県教委提供)

紀美野町のヒダリマキガヤ(写真は県教委提供)