農業の現状を発信 情報紙コラムで土橋さん

和歌山県紀の川市下丹生谷の果樹農家「たつみフルーツ」の土橋弘幸さん(34)が、地元の生産者や直面する課題などを広く消費者に知ってもらおうと、発信する活動に取り組んでいる。2月からは地域情報紙「きのかわトークニュース岩出・紀の川版」でコラムの掲載をスタート。「若い農業者から、お客さまとの接点を持つのが難しいという話をよく聞く。地元の方に農業の現状を知ってもらい、身近に感じてほしい」と話す。

土橋さんは下丹生の農家に生まれ、会社員を経て2016年8月に就農。約2㌶の畑で桃や柿、キウイなどを栽培しており、桃は周辺で栽培する農家の少ないゴールデンピーチが中心で、「味や風味はマンゴーのよう。ジューシーで歯応えがあります」と魅力を語る。

しかし、昨年9月の台風21号で下丹生地区も大きな被害を受け、ゴールデンピーチをはじめ多くの果樹が倒れるなどした。「後継者不足による耕作放棄地の増加が問題となっている上に、これだけ被害が出ると廃業を考える農家も出かねない」と話し、「農業人口の減少や高齢化が進み、1人の農家がやめると産地に大きな影響が出る」と心配する。

土橋さんは若い農業者と販売促進などについて意見交換する中で「一般のお客さまともっとつながりたい」との声を多く聴いた。「生産物を届けるだけでなく、農業者自身が情報を発信することも重要」と考えるようになり、地元密着の「きのかわトークニュース」に協力を依頼。市の主力産業である農業の活性化に貢献できればと同紙も快諾した。

同紙の杉山多栄子さん(53)は「こつこつ農業を頑張っておられる地元農家の姿を発信し、農業をしてみたいと考えている若い人を応援したい」と話す。

同紙は和歌山市から奈良県五條市にかけての紀の川沿いをエリアに、新聞折り込みで約14万5000部を発行。コラムは「農園の社長ココロザシ」と題し、農業を志した理由や紀の川市産の桃を取り巻く環境などについて、毎月1回、11月まで連載する。

「農業の現場の状況を報告し、紀の川市の桃の魅力を発信することで、離農していた人が戻ってきてくれたり、農業者が世代を超えて互いの状況を理解し合えたりすることにつながれば」と土橋さんは意気込んでいる。

自身の桃畑で杉山さん㊧に台風21号の被害を説明する土橋さん

自身の桃畑で杉山さん㊧に台風21号の被害を説明する土橋さん