小林観諷会が創立100年 記念の「能と謡の会」

 和歌山市吹上の観世流能楽師・小林慶三さん(87)が主宰する「小林観諷会(かんぷうかい)」が創立から100年を迎え、7日に同市の県民文化会館小ホールで「能と謡の会」を開く。父親の憲太郎さんが大正9年に立ち上げた同会を継承し、昭和、平成、そして迎える新たな時代へ、紀州の能文化を守り続けてきた小林さんは「文化が育ちにくい和歌山で、試行錯誤しながら100年続けてこられました。『老舗』の仲間入りをさせていただきます」と話している。

 小林さんは幼い頃から父の憲太郎さんに指導を受け、大阪市立大学を卒業後、京都で人間国宝の片山九郎右衛門さんに師事。憲太郎さんが立ち上げた同会を共に支え、昭和37年に独立して同会を継承。和歌山の謡曲界、能楽界の復興の中心を担ってきた。

 稽古に通った生徒は、多いときで100人ほど。同会の40周年を機に小林さんの自宅に設けられた能舞台を、多くの門下生が踏みしめてきた。約10年前からは後進の指導に力を入れ、子どもたちや一般、教員を対象にしたワークショップで講師を務める。体験した子が本格的に稽古に通い、プロと一緒に能舞台に立つなど、着実に和歌山の能文化の裾野を広げてきた。

 記念の会には、30代から90代までの約30人が出演。能「舟弁慶」で、静御前(しずかごぜん)を演じる安田さやかさん(33)は能を習って7年目。「ワークショップを受けてから、どんどんその魅力に引き込まれていきました。100年の節目にお能を舞わせていただくのは光栄なこと」とにっこり。

 日本舞踊にも親しんできた安田さんは「間や緩急といったものに気を配るようになりました。言葉や舞で、心情をどれだけ表現できるか。難しくもあり、楽しくもあります」と話す。

 憲太郎さんの代から稽古に通う生徒も2人いる。そのうち、最高齢の西川敦子さん(93)は謡曲を習って55年。「『私にはこれしかない』と続けてきました。この年齢になり、いろんなことを忘れがちですが、節だけは忘れることはありません。おなかから声を出すことが健康でいられる秘訣(ひけつ)でしょうか」とほほ笑む。当日は素謡「猩々(しょうじょう)」を披露する。

 その他、小林さんの番外仕舞「高砂」、片山九郎右衛門さんの「高野物狂」もある。小林さんは「これからも守り育てる努力を続け、次代の子どもたちに能の楽しさを伝えていきたい」と話している。

 午前9時半から午後4時半ごろまで。無料。問い合わせは小林さん(℡073・422・9304)。

安田さん㊧に型の手ほどきをする小林さん

安田さん㊧に型の手ほどきをする小林さん