「紀州街道」を資源に

前号では岸和田市中心部を通る紀州街道に架かる「欄干橋」の歴史と、現代に息づく地域の人々の思いについて取り上げた。欄干橋を中心とした紀州街道の沿道は、今もにぎわいの拠点となっている。
今週は年に1度開催される「紀州街道にぎわい市」と「鍵曲り(かいまわり)」に込められた、地域の魅力を紹介したい。
紀州街道にぎわい市は、桜の季節に合わせて催される岸和田城お城まつりと時を同じくし、本町地区で開かれる催し。ことしで21回目を迎え、4月7日に開催。同地区の紀州街道の沿道で地元の野菜や手作り雑貨の販売が行われ、約80の店が軒を連ねた。
また、高校生による泉州地域特産の「泉だこ」を用いた商品の販売や、観光案内所を兼ねた「まちづくりの館」では甲冑(かっちゅう)の試着体験など、昔ながらの商家が残るこのエリアならではの試み。
これらの催しは、平成6年に制定された「岸和田歴史的まちなみ保全要綱」で、同地区が歴史的まちなみ保全地区に指定されたことに始まる。基本計画に基づき、歴史的建造物の保全と魅力あるまちづくりを実践。近年では「こころに残る景観資源発掘プロジェクト」と題し、特に優れた資源を市長が指定する啓発の取り組みが行われるなど、大阪と紀州(和歌山)を結ぶ紀州街道の歴史と魅力を後世に伝える、行政と市民が一体となった取り組みが進んでいる。
また、同地区の北端を通る紀州街道の鍵曲りは、だんじり祭の見せ場として知られる。鍵曲りとは、城を攻めようとする敵に対し、まるで行き止まりであるかのように錯覚させるために設けられた、城下町に特有の道路構造。城下町の面影が地域の資源として、いまなお息づいている。
(次田尚弘/岸和田市)