前畑秀子に脚光 日本女性初五輪金メダリスト

 8月11日は「ガンバレの日」――。1936年のこの日、ベルリン五輪の女子200㍍平泳ぎで、和歌山県橋本市出身の前畑秀子(1914~95)が日本人女性初の金メダルを獲得。アナウンサーが「前畑がんばれ」と連呼した実況中継が日本中を沸かせたことにちなんでいる。前畑はNHK大河ドラマで現在放送中の「いだてん」にも登場。前畑の功績を伝える「前畑秀子・古川勝資料展示館」(同市橋本)を訪れる人も増え、市内では「前畑の偉業発信を」との機運が高まっている。

 同施設では写真や新聞記事などの資料約60点を展示。同市名誉市民で水泳界の発展に尽くした前畑の生涯をたどることができる。

 昨年1年間の来館者数は240人だったが、ことしは4月から8月上旬までで、すでに320人が来館し関心が高まっている。

 春には、大河ドラマで前畑役を演じる上白石萌歌(かみしらいし・もか)さんも役づくりの参考にと、展示館を訪ね、ゆかりの地を巡ったという。

 前畑は家の近くの紀の川をプール代わりに泳ぎを覚えたといい、同施設の池西孝仁さん(64)は、「紀の川なくして前畑なし」と、熱っぽく語る。

 同館では、橋本市ゆかりの水泳選手・小島一枝や守岡初子と前畑の交流、ベルリン大会優勝の際の逸話、結婚後の家庭生活、現役引退後も水泳教室を開き水泳界の発展に尽力する姿など、前畑自身も色紙に残した「水一筋」の生涯を伝えている。

 ベルリン五輪優勝前後の思いを綴った日記も紹介し、金メダルを獲得したレースで、アナウンサーが何度も「前畑がんばれ」を繰り返したラジオ放送の音声も聞ける。

 池西さんは「生涯を通じて水泳に関わり、選手としてスポーツの価値を伝えた人。やり始めたら努力を惜しまず、とことんやり抜く前畑さんからは、自分なりの人生の金メダルを目指すことの大切さを教わります。郷土の偉人を知り、ふるさとを愛する気持ちを深めてもらえれば」と来館を呼び掛けている。

 入場無料。開館は来年3月末まで(年末年始を除く)で、午前9時から午後5時まで。問い合わせは同所(℡0736・26・8288)。

前畑秀子の功績を伝える資料が並ぶ

前畑秀子の功績を伝える資料が並ぶ