紀州藩主の行列再現へ 生きた歴史体感事業
歴史的な出来事や当時の生活を再現することにより文化財の理解を促進する文化庁の「リビング・ヒストリー(生きた歴史体感プログラム)促進事業」で、和歌山県和歌山市が第1次募集の採択11都市に選ばれた。紀州徳川家の大名行列の衣装や小道具、家臣の働く様子の再現などに取り組み、紀州おどり「ぶんだら節」などでの公開を目指す。
同事業は、国指定・選定文化財を核として付加価値を高め、収益の増加などの好循環を創出するための取り組みを支援する。往時を再現した復元行事の実施、当時の調度品や衣装の整備、展示などを通して生きた歴史を体感し、文化財の理解を促進することを目的に、文化庁が本年度に開始。市は最初の採択事業の一つに選ばれた。
市の提案事業は、国史跡の和歌山城を核とした二つのプログラムからなる。
一つは、紀州徳川家が編さんした歴史書『南紀徳川史』の記述に基づき、藩に仕えた江戸時代の家臣らの働く様子を再現するもの。火事装束の復元により火消し役の出動の姿をよみがえらせ、奉公人の装束と作業も再現する。
もう一つは、紀州徳川家関係の行列図と『南紀徳川史』に基づき、大名行列を再現するもの。市立博物館所蔵の「紀伊公岡崎駅御通行行列図巻」に描かれた行列の絵などから、藩主と家臣合わせて8人分の衣装、藩主が乗ったかごや小道具を復元する。
事業は、徳川家の紀州入国400周年のことしをスタートに3年度で実施する予定。スケジュールは、本年度に事業実施のための協議会を立ち上げ、火消し役と奉公人の装束を製作し、奉公人の作業を再現する。20年度は大名かごの製作を進め、火消し役の出動を再現。21年度は火消し道具や藩主の衣装、大名行列の道具を製作し、行列の再現を目指す。事業費は3年度で計約1500万円(うち国庫補助率65%)を予定している。
製作した装束は、わかやま歴史館で行っている時代衣装着付け体験などで活用する。22年度以降、紀州おどり「ぶんだら節」や消防出初め式など市民が参加できるイベント内で、再現された大名行列や火消し役の出動などを披露する。
尾花正啓市長は「和歌山を訪れる人たちに、史跡を見るだけで終わってしまうことなく、当時の様子を思い浮かべてもらえるようにしたい。そのために、できるだけ忠実に歴史を再現したものが必要と思っている」と話している。