ガラス作家の西中さん 和歌山市に作品を寄贈

 和歌山市出身のガラス造形作家・西中千人(ゆきと)さん(54)が25日、創作活動30年の節目に故郷の同市に作品を寄贈した。市役所で西中さんから尾花正啓市長に作品が手渡され、尾花市長は感謝状を贈呈した。

 西中さんは和歌浦で生まれ育ち、県立桐蔭高校を卒業後、星薬科大学在学中にガラス造形と出合い、カリフォルニア芸術大でガラスアートと彫刻を学んだ。

 自身で作った器を壊し、ガラス片を継ぎ合わせて創作する「呼継(よびつぎ)」の技法による作品をはじめ、ガラスで枯山水の庭園を造るなど、日本の伝統美から新しい美を生み出す独創的な作風が、国内外で高く評価されている。2008年度市文化奨励賞、11年度大桑文化奨励賞などを受賞している。

 寄贈のために制作した今回の作品は「呼継香炉『東雲(しののめ)』」。東雲は、東の空がわずかに明るくなる夜明けの直前のこと。西中さんが最も美しいと感じる、この時間帯の光景を表現した作品で、青や赤、黄色など海や空、太陽を思わせる鮮やかなガラス片が合わさり、ふっくらした香炉になっている。

 市役所市長室を訪れ、尾花市長に作品を寄贈した西中さんは「生まれ育った和歌山は私の文化的な背景。作品の色味などに意識しなくても出てくるものがある」と、ふるさとの存在の大きさを語り、作品について「ひびに美しさを見いだす日本独特の美意識を見てもらいたい」と話した。

「呼継香炉『東雲』」を手に西中さん㊨と尾花市長