「からくない」シシトウ 県が新品種開発

〝当たらない〟から安心! 和歌山県農業試験場暖地園芸センター(御坊市)が、京都教育大学との共同研究により、辛味成分を作らないシシトウガラシの新品種「ししわかまる」を開発した。辛さが苦手な人も安心して食べられるため、県内農家で広く栽培できるよう普及を目指す。仁坂吉伸知事は「辛味がなく風味は十分ある。大いにPRして和歌山の名産になればいい」と話している。

シシトウガラシは、栽培時に高温や乾燥などでストレスがかかると、種やわたの部分に辛味成分のカプサイシンが作られやすくなる。流通しているもので1割程度、辛い実が交じり、「当たり」などと呼ばれ好む人がいる一方、辛味が苦手な人や小さな子どもがいる家庭などでは購買意欲が鈍る課題があった。

県はシシトウガラシの出荷量が高知県、千葉県に次ぐ全国第3位であり、この課題を解決し、出荷量を増やそうと、2013年に辛くないシシトウの開発に着手した。在来品種の「紀州ししとう1号」にカプサイシンを合成しない特性を持つピーマンの品種「京ひかり」を掛け合わせ、遺伝子分析でカプサイシンを作る遺伝子を持たない苗を選別。6回の交雑を繰り返し、外観や収量、秀品率は紀州ししとう1号と変わらず、辛くない新品種を完成させた。

県内の主要産地である有田川町を中心に試験的な栽培を進め、「辛くないししとう」のラベルを貼り、7月から一部を大阪などの市場に出荷している。来年以降の栽培面積を広げるため、同センターは種や苗を県内の農家に普及させる取り組みを進める。

開発に携わってきた同センターの田中寿弥主査研究員は「辛い実が交じるために消費に制約があった。より一般的な食材として使いやすくなるので、栽培を増やしたい」と話していた。

 

辛くないシシトウの新品種「ししわかまる」