屏風の美を味わう 県立博物館で企画展
古くから調度品として用いられ、二つで一組を基本としながら、さまざまな形式で人々の目を楽しませている屏風(びょうぶ)の魅力を紹介する和歌山県立博物館(和歌山市吹上)の企画展「屏風の美―収蔵品の名品から―」が来年1月24日まで開かれている。同館の収蔵品を中心に、江戸時代中期の「奇想の画家」曽我蕭白(しょうはく)の名品などを見ることができる。
屏風は蛇腹状に折り曲げて立て、六つの面を持つものを二つで一組とする「六曲一双」を基本としながら、二曲や八曲などの形状、対をもたない一隻で独立した作品となるものなど形式はさまざまで、一隻をひと続きの大きな画面として用いる場合や、一扇ごとに異なる書画を貼り合わせて構成する場合もある。
ダイナミックなパノラマ、対であることを生かした画面の対比、正方形に近い二曲屏風の構図など、折れ曲がり展開される屏風の画面は、多彩な魅力を見せてくれる。
今回の企画展は、同館が収蔵する物語、山水、和歌浦の景観、花木などを描いた作品を中心に紹介し、屏風と同じく対の美を楽しむ絵画や陶磁器も並んでいる。展示総数は県指定文化財1件を含む17件24点。
見どころとなる展示作品の一つが「源平合戦図屏風」(六曲一双)。右隻は一ノ谷、左隻は屋島の戦いを中心とした場面がひと続きの大画面に展開されている。金雲で区切られた画面には、義経の鵯越(ひよどりごえ)の逆落とし、扇の的を射抜く那須与一など名場面の数々がちりばめられ、平家を平安貴族風に描く点が珍しい作品となっている。
曽我蕭白の「頼光金時図屏風」(二曲一隻)は、母の山姥(やまんば)と共に金太郎こと坂田金時が主従関係を結ぶ源頼光と出会うシーンを描いており、人物の怪異な風貌が目を引く。
屏風以外の対の美術品では、「南紀男山焼(おとこやまやき)交趾写(こうちうつし)二彩獅子形(にさいししがた)屏風挟(ばさみ)」がある。屏風の転倒を防ぐために用いる道具で、鮮やかな紫と浅葱(あさぎ)の釉が施された愛らしい阿吽(あうん)の獅子となっている。底には南紀男山焼を代表する陶工、光川亭仙馬(こうせんていせんば)の刻印銘が確認できる。
午前9時半から午後5時(入館は4時半)まで。会期中の休館日は年末年始の28日~1月4日と、12、18日。入館料は一般280円、大学生170円、高校生以下と65歳以上、障害者、県内在学の外国人留学生は無料。
問い合わせは同館(℡073・436・8670)。