大型2件で負債額前年の3倍 20年県内倒産
東京商工リサーチ和歌山支店がまとめた2020年の和歌山県内倒産件数(負債額1000万円以上)は90件で、新型コロナウイルスの厳しい影響が続いた中、前年比4件の小幅な増加にとどまった。一方、負債総額は同204・28%(64億8400万円)増の96億5800万円と3倍以上に増え、前年はなかった10億円以上の大型倒産が2件発生したことが響いた。
20年は2月ごろから新型コロナの感染が急拡大し、緊急事態宣言の発令などにより経済活動は停滞したが、政府や自治体、金融機関による緊急融資や各種支援策が相次いで行われたことで倒産は抑制され、県内の新型コロナ関連倒産は3件にとどまった。
倒産件数を産業別にみると、「サービス業他」が34件(前年比3件増)で全体の37・8%を占め、「小売業」が18件(同2件増)、「建設業」が13件(同7件減)と続いた。
原因別では、「販売不振」が最多の78件、「既往のシワ寄せ」が5件で、不況型の倒産が全体の92・2%を占めた。この他、「その他(偶発的原因)」が4件、「他社倒産の余波」が2件だった。
形態別では、法的倒産の「破産」が66件で最も多く、「民事再生法」が13件、「特別清算」が2件。私的倒産は「銀行取引停止」の9件で、前年より5件増加した。
負債総額は、「1000万円以上5000万円未満」の小口が65件と最多で、「5000万円以上1億円未満」が11件、「1億円以上5億円未満」が9件、「5億円以上10億円未満」が3件、「10億円以上」が2件。主な倒産には、病院経営、介護事業の医療法人かなめ会(新宮市、負債額26億5800万円)、観光ホテル経営の㈱RNコーポレーション(白浜町、15億円)などがあった。
地域別の内訳は、和歌山市が33件、西牟婁郡が8件、岩出市と紀の川市が各7件、橋本市・田辺市・新宮市が各6件、海南市が4件、有田市・有田郡・御坊市が各3件、伊都郡と東牟婁郡が各2件。
20年下半期の県内の倒産件数は一桁台で推移し、新型コロナ感染拡大に伴う金融支援策が功を奏した形となり、関連の倒産も3件にとどまった一方、一定の効果をもたらした政府のGoTo事業が12月に停止となり、景気回復の遅れが懸念される状況となっている。
同支店は「過剰債務に陥った企業も多く、支援策で延命しても新たな資金調達や返済原資の確保が難しい企業は少なくない。従って、小規模零細事業者を中心に、事業再開がままならず、倒産もしくは廃業が増勢に転じることが危惧される」とみている。