和歌山題材の「火具槌のうた」 16日~配信

1400万年前に紀伊半島で起きたという地球最大規模の噴火から着想を得た創作歌劇「火具鎚(かぐつち)のうた」が16日正午から、ユー・チューブで配信される。和歌山市が中心となり、新型コロナウイルス禍の中で文化芸術活動を活性化させるプロジェクト「ワカヤマ・サウンドスケープ」の一環。主人公をはじめ県出身の若手俳優や学生、文化団体メンバーらが出演し、2月26、27日には和歌山城西の丸広場で無観客での上演収録を行った。

同市や市観光協会などで構成する実行委員会が、文化庁の戦略的芸術文化創造推進事業を活用して取り組んでいる。新型コロナ感染拡大により、文化芸術活動の中止や延期が余儀なくされている中、若者や子どもを中心に、体験の機会を提供するもので、エイベックス・エンタテインメント㈱などが制作を手掛ける。

物語の舞台は西暦2100年、世紀末を迎えた未来の和歌山市。赤く燃え上がる空に「火具鎚」という言葉(うた)…全く同じ夢を見る現象が世界に広がり、現実と夢が入り混じっていく謎めいたストーリーが、色鮮やかなレーザーやLEDなどの機材を駆使した壮大な演出とともに展開される。

主人公の高校生3人はオーディションで県出身の若手俳優が選ばれ、ミーコを土井美咲さん(16)=和歌山市出身=、カイを中西弘志さん(31)=紀の川市出身=、ソラを藤田晴さん(16)=同=が演じる。他に和歌山児童合唱団や和歌山雅楽会、地元のダンサーら総勢約100人が出演する。

主人公3人のキャラクターデザインは、和歌山市出身の劇画家で「ゴルゴ13」の作者として知られる、さいとう・たかをさんが担当。「『火具鎚のうた』という舞台作品にて、和歌山の魅力的な『歴史』『自然』が末永く伝承されていくことを心から願っております」とコメントしている。

収録では、普段は市民の憩いの場である西の丸広場にステージを特設。次々と移り変わる光やスモークなどにより異空間さながらに演出された舞台で、俳優やダンサーらが繰り広げる演技を、6台のカメラを使って収めた。

劇団で活動している中西さんは「普段とは全く違う環境だが、和歌山弁も出てきて楽しく演じている。コロナで気持ちが沈むこともあるが、演劇は配信などの工夫で乗り越えられる部分があると思うので、この作品が前を向くきっかけになってほしい」と意気込む。

土井さんは「レーザーやスモークなど、演出が異空間すぎてすごいと感じる。環境問題やSNSでの差別などについて考え直すきっかけになる作品だと思う」、藤田さんは「本格的な舞台は初めて。俳優として大切なことを教えてもらい、貴重な経験になっている。自分と同じ多くの高校生にも見てもらいたい」と話している。

作品の詳細は公式ホームページ(https://kagutsuchinouta.jp/)。

壮大な光の演出の中で行われた上演の収録(2月27日)

壮大な光の演出の中で行われた上演の収録(2月27日)

主人公の高校生を演じる(左から)中西さん、土井さん、藤田さん

主人公の高校生を演じる(左から)中西さん、土井さん、藤田さん