サンシティIR撤退 県の応募業者1社に

和歌山県が進めるカジノを含む統合型リゾート(IR)誘致計画の事業者に応募していたサンシティグループホールディングスジャパン㈱は12日、事業からの撤退を決定し、県に届け出た。新型コロナウイルス感染拡大による世界経済の先行き不透明感や、日本のIR区域認定手続きが当初の予定より長引く見通しであることなどを理由としている。

同社はマカオを本拠地とするサンシティグループの日本法人で、県のIR事業者公募には、同社とクレアベスト・グループ(カナダ)の2社が応募。県は、両者の提案を有識者らによる選定委員会で審査し、ことし春ごろに優先権者を決定するとしている手続きの最中で、結果発表が近づくタイミングで1社が撤退する事態となった。

サンシティはマカオの他、ロシアやベトナムなどで複数のIRを運営。2019年8月に日本法人を設立し、同月には県主催のIRシンポジウムでプレゼンテーションを行い、和歌山でのIR事業に名乗りを上げた。

20年9月には和歌山市中に和歌山事務所を開設。バスケットボールチーム「和歌山トライアンズ」とのオフィシャルスポンサー契約締結や、IR予定地の和歌山マリーナシティ(同市毛見)にある和歌山セーリングセンターでの若手選手育成への協賛など、地元との関係強化も進めていた。

同社はホームページに、グループ創業者で最高経営責任者(CEO)のアルビン・チャウ氏のコメントを掲載。「新型コロナによる業界への甚大な影響と、世界中の膨大な数の企業における不確実性は今後も長期にわたり続く恐れがあり、日本のIR区域認定手続きは、当初の予定よりも大幅に時間を要すると想定される中、多くの事柄が不透明であり、事業者としてのリスクを鑑み、熟考の上で厳しい決断をするに至った」としている。

日本法人社長代理の大原義隆弁護士は本紙の取材に「地元の皆さんに迷惑を掛けてしまうことについては特に苦慮した。中途半端なところで投げ出すような形になり、心苦しく思っている」と語った。

こうした説明の一方、同社を巡る疑惑の浮上が背景にあるとの見方もある。オーストラリアのカジノ管理機関が2月に公表した報告書で、同社の顧客が資金洗浄をしたなどと指摘し、同社は反社会的勢力との関係などを否定する声明を発表していた。

県IR推進室には12日、メールで事業者公募を辞退する届け出があり、同社と連絡を取り、意向を確認したという。同室の担当者は「驚いた。残念ではあるが、理由を見ると致し方ないことかと思う」と話した。

サンシティの撤退により公募に応じているのはクレアベストのみとなったが、県は選考スケジュールに変更はないとしている。同社の提案の適格性などを審査し、近く結果を発表する予定で、選考過程の透明性を示すため、必要な資料を併せて公開する方針を示している。

 

閉鎖を知らせる貼り紙がされたサンシティの和歌山事務所