高齢者の買い物を支援 紀美野で実証実験

高齢化が進む和歌山県紀美野町長谷毛原地区で29日、車が運転できない住民のための乗り合いの買い物支援サービス「きみのり」の実証実験が始まった。同地区からスーパーまでは遠く、個人商店も少ないため、買い物弱者の支援策として大きな期待が寄せられる。

同地区は同町の東端部に位置。谷沿いに住居が点在し、人口426人(4月30日現在)のうち65歳以上は418人で高齢化が顕著な地域。車が運転できない人や運転に不安のある人が多く移動が困難で、買い物が負担となっていた。

トヨタカローラ和歌山㈱(和歌山市和歌浦東・西川直人代表取締役社長)と、同町動木の㈱なかモーター自工(田中祥次朗代表取締役社長)が「トヨタ・モビリティ基金と日本自動車販売協会連合会による自動車販売店各社の地域支援活動に対する助成事業」を活用して実施。地元の相互組織「元気長谷毛原会」が主体となり運営する。

対象は同地区に住む65歳以上の人で、利用は事前予約制。乗り降り地点は自宅となり、行き先は「イオンタウン貴志川」のみ。

使用する車は普通車と軽自動車の2台。大人数が乗れるバンを予定していたが地元の声を聞き、細い道でも小回りのきくコンパクトカーを採用した。車両のデザインは、同町のイラストレーター、スケノアズサさんが手掛けた。

料金は無料(実証実験終了後はガソリン代など実費が必要)。毎週木曜の午前、土曜の午前・午後の3便運行する。

27日の出発式には寺本光嘉町長らが出席。トヨタカローラ和歌山の西川社長は「高齢者の助けになれば。ぜひとも使ってもらいたい」と期待。ボランティアドライバーを務める宗和重行さん(72)は、「仕事は引退したが、空いてる時間で地域の役に立ちたい。運転に自信があるのでぜひ乗ってほしい」と話す。

試験走行で乗車した地元の炭家恭子さん(77)は「乗り降りしやすくて広かった。手すりも多くて乗り心地がいい」と笑顔。「食品の配達はあるが日用品や洋服などの買い物は久しぶり。一緒に行った友達は両手いっぱいに買い物を楽しんでいた」と話し、森下澄子さん(83)は「免許の返納を悩んでいる人も多い。『きみのり』のようなサービスは地域に必要だったので、これから楽しみ」と期待を寄せた。

期間は29日から来年4月までの11カ月間の予定。今後は段階的にエリアを拡大し、最終的に同地区全域で展開する。期間中にシステムを構築し22年の6月に同車両を寄贈する予定。

「きみのり」を利用する住民

「きみのり」を利用する住民