那賀の北米移民記録に 懇話会が冊子作製
和歌山県の那賀地方の移民史を研究する那賀移民史懇話会(梅田律子代表)は、これまでの展示や発表と新たな資料などをまとめた冊子を完成させた。非売品だが県立図書館や博物館、岩出や紀の川市の小中高校などにも配布する予定。
梅田代表(71)が移民史に関わるきっかけとなったのは、2010年に古い家の解体の際に片付けをした時のこと。移民だった祖父の寅之助さんのパスポートや身分証明書、写真、書籍などの資料を発見し、寅之助さんのアメリカでの生活などを知ることとなった。さらに寅之助さんのきょうだいの家なども訪ねると写真や手紙、書類などが多く見つかった。
その後、郷土の歴史の専門家で那賀高校で日本史を教えていた岩鶴敏治さん(86)を顧問に同会を立ち上げ、那賀地方の歴史を調べてきた。龍門村(旧粉河町)の岩鶴さんの親戚の西家には、渡米し庭園業などを経営した西九一郎の資料などがあった。
那賀移民史懇話会は2014年に約30人の会員と共に発足。渡米者を中心にした展示や発表とともに19年には、1880年に紀の川市に作られた私塾「共修学舎」をまとめた展示会を開催した。
今回作成した冊子はA4サイズ65㌻。那賀地方から渡米した先人の伊達多仲(だてたちゅう)や三谷幸吉郎について記した「那賀地方の先人たち」、江戸時代から明治中期ごろに那賀地方に多くあった私塾や、和歌山藩と福沢諭吉のつながりなどをまとめた「当時の那賀地方の状況」など、写真や資料とともに記載している。
福沢諭吉の慶應義塾で漢学や洋楽、欧米文化を学び、自由民権運動にも関わった本多和一郎と共修学舎について、日誌やメモなど当時の生活や状況が分かるようにまとめている。
梅田代表は「記録として残しておきたいと作製した。これまでの展示や発表をまとめることができて良かった。多くの人の目にふれてもらえたら」と話す。
梅田代表と共に執筆を手掛けた岩鶴さんは「人間関係やつながりが分かる資料がたくさん。収穫の多い内容になった」と話している。
新たな資料が今なお見つかっているといい、今後は資料を和歌山大学へ寄贈する予定。