介護の楽しさユーチューブで発信 西原さん

和歌山市北出島の介護相談センターピース&ピースの専務取締役、西原隼登さん(34)が「介護ユー・チューバー」として、介護の世界の実態を発信していくという新たな試みに挑戦している。

2016年に設立した同社は、隼登さんの母、加奈子さんが代表取締役を務める。加奈子さんが介護を始めたきっけかは、隼登さんが16歳の誕生日を迎えた日、両脚をほぼ切断するほどの大事故に遭い、入浴や排泄、車椅子など全てに介助が必要となり、ヘルパー2級の取得が必要になったこと。加奈子さんはその後も訪問介護のヘルパーや責任者という経験をへて、ケアマネージャーの資格を取得するなど介護の道を突き進んだ。

加奈子さんの背中を追うように、隼登さんも18歳で資格を取得し介護の道に。

介護の魅力は「一人ひとりの人生の最終のところに関わらせてもらえること」と話す隼登さんは、「人生の最終に、望む場所で思うように過ごしてもらいたい」との思いで、過去には、紀美野町の山奥に住む利用者が薬を飲んだかを確認するため、真っ暗な夜にハンドルを握り、タイヤがはみ出すほどの崖道を進んだことも。誰も引き受けないような仕事でも、利用者の「ここに住みたい」との思いに寄り添い、できる限りかなえたいという。

一人ひとりと真っすぐ向き合う隼登さんは利用者からの人気も高く、担当していた一人の女性が亡くなった夜、家族から「おばあちゃんは隼登くんに側にいてほしいはず」と、線香の火を絶やさないよう「寝ずの番」を頼まれ、本当の「人生の最終」に立ち合ったこともある。

 

業界イメージ覆す こつ伝授、質問に対応

数え切れないほどの出会いや経験を重ねるうち、「世間で『3K(きつい、汚い、暗い)』ともいわれる介護のイメージを変えたい」との思いが強くなり、昨年2月にユー・チューブチャンネル「介護の事ならピース&ピース」を立ち上げた。

自社を含め、全国の介護スタッフや、家族の介護に携わる人に向けた動画を配信。同社の生活相談員で、お笑い芸人でもある池田憲彦さん(41)(通称のりちゃん)と共に「とにかく明るく発信すること」を大切に、情報を発信している。

教科書には書いていないような面白い介護レクリエーションや、ポイントだけに絞った「すぐできる意外と知らないオムツ交換」など、これまで介護現場で培った経験を生かした動画は、編集技術や音声、映像、企画なども全て自ら勉強しながら行い、スタートから1年たたずして収益化を達成。現在のチャンネル登録者数は1850人を超えるなど、話題になっている。

動画だけでなく、「介護に関する質問は何でも受け付けます」といったライブ配信も行っている。「具体的にはどんな事故が多いのか」「こんなときにはどういった声掛けをしているか」などの質問が寄せられるといい、ライブならではの緊張感のもと、類いまれな「介護ユー・チューバー」として活動の幅を広げている。

隼登さんは「介護の世界の実態を発信していくことが自分の使命だと感じている」と話し、「ユー・チューブを通して介護の取り組みの奥深さが伝われば」と願う。「道端で困っている人がいたらすぐに助ける自分でありたい」と笑顔で話し、介護の根本にある人に対する温かい思いがあふれる隼登さんが、ユー・チューブという新たなツールで発信先を広げ、世間の介護に対するネガティブなイメージを覆していく。

 

「介護の事ならピース&ピース」をPRする西原さん㊨と池田さん