有吉佐和子の和歌山 生誕90年顕彰イベント

『紀ノ川』『華岡青洲の妻』などで知られる和歌山市出身の作家・有吉佐和子(1931~84)の生誕90年を記念し、市など主催の顕彰イベント「ふるさとと文学2021~有吉佐和子の和歌山」が、「紀の国わかやま文化祭」の事業の一つとして11月3日に和歌山城ホールで開かれる。日本ペンクラブが企画監修し、映像やシンポジウム、朗読劇などを通して、郷土作家の人物像や作品世界に迫る。

7月30日、市役所で市と同クラブが合同記者会見を開き、会場には尾花正啓市長、オンラインで同クラブ会長で作家の桐野夏生さん、企画を中心に進めてきた前会長で作家の吉岡忍さんが出席した。

「ふるさとと文学」は同クラブが2015年から続けている取り組みで、各地域が生んだ作家と風土にスポットを当て、地域文化の振興、文学への関心を高めることなどが目的。ライブステージのスタイルで文学に親しめるのが大きな特徴となっている。

イベントは3部で構成され、第1部は、映像と語りと音楽で有吉の生涯や作品の世界を読み解いていく「紀ノ川の流れゆく先へ」。脚本を吉岡さん、映像を四位雅文さん、語りを山根基世さん、バイオリンを佐藤久成さんが手掛ける。

第2部は「和歌山に生まれ、和歌山を愛し、和歌山も日本も超えて活躍した作家―有吉佐和子。」と題したシンポジウム。有吉の娘で大阪芸術大学教授の有吉玉青さん、作家の下重曉子さん、作家の中島京子さん、吉岡さんがパネリストとして登壇する。

第3部は、有吉の初期の戯曲作品『石の庭』を朗読劇で上演する。演出は杉田靜生さん、出演は浜畑賢吉さん、荒川久美江さん、宮川智之さん、久保田彩佳さん、奥洞和哉さん。

会見で桐野さんは、社会問題をいち早く扱った『恍惚の人』や『複合汚染』などの有吉作品を挙げ、「時代のつかみがものすごく早くてうまい。ジャーナリスティックなところもある。物語性と時代を見る目の二つが絡み合い、総合的にすごい作家だと思う」と敬愛の思いを語り、イベントへの来場を呼び掛けた。

吉岡さんは、戦後に活躍した作家たちが古いものを捨て、新しい時代をつくることに夢中になっていた風潮に対し、有吉は一線を画して伝統や歴史の豊かさを確かめていったと指摘。「和歌山に生まれ育ったことが、有吉さん自身が古さというものを再発見するための大きな手掛かりを与えていたと思う」と、有吉にとっての和歌山の存在の大きさを話した。

尾花市長は「市民にとっては文学を通してふるさとを見つめ直す良い機会になり、全国から訪れる方に有吉さん、和歌山を知ってもらう絶好の機会にもなる」と期待を示した。

イベントの観覧は無料。希望者は往復はがきで31日まで(必着)に申し込む。往信用裏面に「有吉佐和子の和歌山 参加希望」と、申込者と同伴者(1人まで)の名前(ふりがな)、郵便番号、住所、電話番号を書き、要約筆記や手話通訳が必要な人、車いす席を希望する人は、その旨も記入する。宛先は〈〒640―8511和歌山市七番丁23和歌山市役所文化振興課内「有吉佐和子の和歌山」事務局〉。定員は450人で、応募多数の場合は抽選。

問い合わせも事務局(℡073・435・1194)。

 

合同記者会見でポスターを手に顕彰イベントをPRする尾花市長㊥とオンライン参加の桐野会長㊨、吉岡前会長