先人の教え現代に生かす 濱口梧陵シンポ
国連が定めた「世界津波の日」の5日、和歌山県と広川町は、「稲むらの火」の逸話で知られる同町出身の濱口梧陵(1820―85)の偉業を県内外に発信しようと、和歌山市の県民文化会館小ホールでシンポジウムを開いた。
昨年、梧陵の生誕200年を迎え記念シンポジウムを予定していたが、コロナ禍で延期となっていた。「現代(いま)に生きる梧陵の精神」と題し、会場には一般参加者ら216人が参加。ウェブでのライブ配信は事前に応募のあった2539人が視聴した。
仁坂吉伸知事はあいさつで「濱口梧陵さんがこれだけ頑張られたことを、われわれが無にすることがあってはいけない。人の命を助けるため常に油断せず準備をしなければ」と話した。
梧陵は1854年の安政南海地震による大津波に襲われた広村(現広川町)で、稲むらに火を放って高台に導き多くの村人たちを避難させた。その後、私財を投じて築堤した広村堤防により、1946年の昭和南海地震の津波から人々の命を救った。
シンポジウムでは女優で作家、歌手としても活躍する中江有里さんが「歴史から見える、未来の道」をテーマに講演。中江さんは、「稲むらの火」の原作者・小泉八雲(1850―1904)について取材したことをきっかけに梧陵を知ったといい、実際に訪れた広川町での映像とともに、現地で感じたことなどを伝えた。中江さんは「今私たちは梧陵が目指した道を生きているのだろうと思う。これからも、いろんな災害に対して先人が打ち立てた偉業のもとで学んだことを生かしていかなければならない」と話した。
その他、関西大学社会安全学部特別任命教授・社会安全研究センター長の河田惠昭さんが「濱口梧陵を世界の英雄にする!」を演題に話し、梧陵の精神のもと、社会貢献を目指す県立耐久高校の生徒やユニタール(国連訓練調査研究所)研修生が事例を紹介した。